「五欲煩悩迷妄の煉獄を経て、

はじめて人間の事が透明に見えてくる」

という。

 

私はそう思わない。

どのような体験を経ても、

人間が分かることはありえない、と思う。

 

少しは理解が深まるかもしれないが、

それだけ。

 

人生経験を重ねると、

世界や宇宙の奥深さや複雑さが濃くなっていく、

つまり、透明度は低下してくる。

これが普通の生き方だろう。

 

世の中の真理は分からないが、

分からないままで納得し、

満ち足りて幸せになる。

それを悟りというのだろう。

要するに、無知の自覚。

 

私の結論を言えば、

私や自分や自己や自我なるものは、

もともとない、生まれたときからなかったもの。

初めからないのだから、迷いもないのが当然。

 

あると感じるのは、

ひとの迷いや幻想。

それを悟りというのだろうか。

悟りさえも、もともとない。