大江健三郎著「人生の親戚」。

 

まり恵さんの映画のタイトルを、

大江さんは、人生の親戚と訳した。

原語はスペイン語。

映画の舞台はメキシコ。

アズテックのピラミッドがある山のふもとの小さな村。

 

タイトルの意味は、

「血のつながった仲ではないが、

生きていく上で苦難をともにするうちに、

まさに親戚のようになった

真の友・仲間として、

インディオや混血の女たちが自分を受け入れてくれたと、

まり恵さんが心貧しく誇ったのだったかと、僕は解釈したのだ。」

(上記は本から抜粋したもの)

 

この本は、

子どもを自殺で失った母親の物語。

どのように苦難を乗り越えたのか、

あるいは、乗り越えられなかったのか、

死ぬまでの話。

 

自殺した子どもをもつ親は多い。

私の知り合いにもいる。

 

子どもの自殺というほど、

親を悲しませる体験はないだろう、と私は思う。

 

人は、このような悲惨を、

どのように受け入れたらいいのか、

この本のテーマだろう。

 

まり恵さんは、とても賢く、かつ精神的にも強い人。

そのような人は、特別な生き方をする。

それが、映画になったのだろう。

 

大江さんの55歳の創作。

これからの成熟が楽しみだ。

私の読書は、

55歳以後の彼の創作に絞ろうと思う。

若い頃の本には、それほどの感銘を受けなかったのだ。