私は、ほぼ毎日スーパーに行く。

半分は散歩のため。

 

昨日、スーパーの入り口付近のベンチに座っている

40歳前後の女性から突然、声をかけられた。

顔は知っているので、見知らぬ人ではない。

「山本さんが好きなの?」

 

山本さんというのは、その女性の友人。

山本さんは、とても変わった人で50歳くらいか。

 

私の答えは、

「そんな元気はない」

 

たぶん、この回答では、

何もわからないだろう。

詳しく説明する気にもなれない。

 

それにしても、私の人生で、

誰かが好きかと尋ねられたことがあっただろうか。

珍しいことが起こったものだ。

 

山本さんが、どんなに変わっているか。

私は、歩いている姿しか知らない。

派手な衣装がけばけばしい。

紫色が中心。

普通の人はしない格好。

 

さらに、一年中、同じ服装というのがすごい。

暑い日も寒い日も同じ。

靴は中学生が学内で履く上履き。

靴底の薄いやつ。

靴下も薄い。

「寒くないの」と尋ねたら、

寒くないという。

 

寒い日でもコートやジャンバーなし。

「風邪をひいたことはないの」と尋ねても、

風邪をひいたことない、という。

 

炎天下も同じ服装。

 

お父さんが数年前に亡くなったという。

ひとり暮らしだが、どういう生活だろうか。

スーパーでおにぎりやパンや総菜を買っている。

ご飯を炊くことはしない感じ。

 

一度、家を見てみたいが、

機会がない。

 

彼女を初めて見たのが15年くらい前になる。

毎日、家から4km先にあるショップモールに通っている。

とぼとぼ歩いて。

歩き方に特徴。

ひよこが歩く感じ。

一時間以上かけて毎日歩いている。

昼はモールのベンチで何か食べている。

午後、2時から3時くらい、また歩いて帰っている。

毎日、同じ服装。

 

私は同じ道を通勤していたので、

時々見ていた。

 

話しかけたのは、私が仕事を辞め。

散歩が日課となったから。

その頃、彼女も遠くまで歩くのがきつくなったのか、

近くのスーパーに通い始めた。

 

道の途中で出会って、話しかけた。

 

つづく