下記の概説は、どの国のことを述べているのでしょうか。

 

賃金は、過去35年で上昇する余地は十分にあったが、ほとんどの人の実質賃金は伸びず、

生活水準は下落した。実際、平均賃金のピークは40年前であった。

 

労働の経済活動に対する寄与度が縮小しているのは世界中で見られる。

この国も、過去40年で5%以上低下して、現在、50%を若干上回る程度である。

 

民主主義では、長期的な政策課題に取り組もうとしても、選挙で中断される。

政治家は成果が分かりやすい政策で有権者にアピールする。

有権者は自分たちの世代が幸福になる政策を選好し、将来世代の負担や長期的影響を考慮に入れない。

政治家は有権者の短期的要望に応えるしかない。

 

短期志向は政治だけでなく、ビジネスや金融にも浸透している。

この国の大企業の平均寿命は戦前、平均60年だったが、現在18年になっている。

投資家の株式保有も1970年には5年3ケ月であったのが、わずか7ケ月になった。

 

株式上場の銘柄数もピークから半減している。

経済成長が減速する中で、投資家は安定した収益を選好している。

中小規模のリスクの高い事業より、安定した大企業へ多くの資金を配分している。

 

魅力的な投資先がないので、大企業の経営者は利益を自社株買いと配当にまわすしかない。

 

この国は長期的投資をしない高齢層が貯蓄の大半を占める。

収益率が低く、安全な資産運用は、株式投資を減少させ、企業成長を抑制する。

また、投資家の短期志向は、重要な問題を引き起こしている。

 

この国は、史上初めて、現役世代の教育水準が上の世代よりも低下しているというOECDの報告がある。現在の労働者の多くは、上の世代よりも相対的に熟練度が低く、経験に乏しく、技能水準が劣っているのである。その結果、生産性が低下し、経済成長の足を引っ張っている。

 

上記は、アメリカ経済の現状についての最新の報告である。

「いまこそ、経済成長を取り戻せ」ダンビサ・モヨ著 2019年8月白水社発行

なお、著者は、2009年、タイム誌で「世界で最も影響力のある100人」に選ばれている。