いにしえの賢人は、「この世は苦」と言われた。
「この世は天国・楽園」と私は思う。
水はあまい。
空気はおいしい。
日の光は希望に満ちている。
野にも山にも、海にも、幸があふれている。
まさに、楽園。
だが、人の我だけは、どうしようもない。
我という牢獄から、死ぬまで逃れられない。
5感という狭い窓から外の世界を眺めるだけ。
世界の実態は、人にとって不明。
おそらく、人である限り。
人がもっているハイテク道具は言葉だけ。
だが、言葉はあいまいさで成り立つ。
正確な描写や記述は望めないオモチャ。
70年も生きれば、
どんな楽園も牢獄になる。
外見は美しく飾られた牢屋。
まるでファッションショー。
しかし、自分さえも知りえない。
まして、他人のことなど。
千年生きたとしても、
あなたの無知・愚かさは不変。
70過ぎて、忙しくする人がいる。
例えば、政治家や経営者、あるいは芸術家。
死ぬまで舞台で。
我を忘れて打ち込めるとき、
アスリートも彫刻家も、
ワザと一体となり、我から逃れる。
幽体離脱のように。
幸せとは我を忘れた状態だと、
おっしゃる人もいる。
せめて、一時でも
牢屋にいることを忘れたいのが
人のありようだろう。