昨日はマスコミの記者と30分話す。

吃音がテーマ。

私の体験と、吃音についての意見を伝える。

 

話の途中で、

吃音で苦しんでいる時、何故、医療機関に相談しなかったのかと、聞かれた。

 

私は過去、一度も相談していない。

医者、教師、民間の矯正所にも、行っていない。

どうしてだろう。

 

10歳頃に吃音を意識し始めて、

すべて、自分ひとりで対処してきた。

他人に相談したことがない。

母親は知っていたが、余計な干渉をすることはなかった。

母は一度だけ、民間矯正所の資料を探してくれた。

勿論、私は利用していない。

 

私は、超過保護の幼児期を過ごし、

ひとり立ちできないまま小学校にあがった。

画用紙が配られれば泣くだけ。

(ひとりでやった経験がない)

教室でメソメソ泣いているだけなので、

担任の女性教師が、だっこしてあやしてくれたという。

教室に適応するのに、数ケ月以上かかったのだろう。

 

小学4年から、級長になっている。

自分のことを思うに、

かなり、自立心の強い性格なのだろうと思う。

人の言うなりになることがない、

自分だけで決めて、自分の思うように生きる。

そういう性質かもしれない。

 

吃音を意識したとき、

はじめは、何とかしてなおそうと努めた。

しかし、できなかった。

かなり苦労したが、ダメ。

 

人というのは、適応力が旺盛。

何でも慣れるものだ。

たぶん、吃音にも慣れたのだと思う。

 

言葉が普通に口から出てこない。

それは、大変。

いつ出てくるのか、まったく分からない。

しかし、長くても、1分もすれば、出るだろう。

言葉を忘れたわけではない。

 

1分も、もぞもぞすれば、

教師の質問に普通に答えることはできない。

だから、適当にごまかすしかない。

いろいろな手法を編み出せばいい。

なんとか、やれるものだ。

 

高校で、吃音を克服しようと弁論部に入る。

文化祭で弁論する。

全校生徒1500名以上を前にして。

聴衆の誰一人、私が何を言っているのか分からなかった。

日本語を話しているくらいは、分かったと思うが。

 

弁論部の仲間も、ひとりも感想を言ってくれない。

内容を知らないから、感想もない。

 

20代は、職歴が20近くある。

ある興信所で企業の信用調査を半年した。

銀行や取引先に飛び込みで個人情報を聞き出すのが仕事。

初対面の相手から、大事な情報を引き出す仕事。

吃音者では、なかなか難しいはず。

こんな仕事も、何とかこなしている。

たぶん、私の要領良さが発揮されたのだろうか。

 

吃音が直接的な原因で、

大学を中退している。23歳のとき。

大学を止めるのは、私も相当にショックだった。

 

たぶん、吃音に慣れていったのだろう。

そして、50歳くらいで、完全に吃音は消えた。

今は吃音の頃がなつかしい。