人の一生には、最高の瞬間が何度かある。
例えば、
あこがれの彼女とデイトしたとき。
長年挑んで失敗し続けて、やっと合格した日。
待望の我が子の誕生。
どうしても克服できなかった難問が解決したとき。
人により様々。
その最高の瞬間を、
繰り返し幾度も体験できるとしたら。
それが可能なのが、
演劇。
この方は1200回も独演劇の上演。
朝日のひと欄、坂本長利さん。
100歳までが目標という。
「役に惚れ込んでいます。
ひたむきな愛の話。
枯れてくるほどに愛情は深くなるのですよ」
坂本さんの生きる理想。
たぶん、男と女の愛。
それを舞台の上で実現しているのだろうと思う。
人生の最高の瞬間を瞬間冷凍保存して、何度も解凍しているのだろう。
この方は、今、89歳。
毎朝、散歩と木刀を100回振って身体を鍛えている。
這いずり回っても上演したいとか。
舞台で役を演じる全身の歓喜が伝わってくるようだ。
人の一生で、愛ほど、喜びを与えるものはないだろう。
お金や権力では手に入らない。
青春。
いのちのほとばしり。
若い駿馬が草原を駆け抜けるように。
異性を求めるエネルギーがあふれている。
もちろん、
歓喜は天を超える。
愛は、人にとって最大の宝。
しかし、愛をつくる要素は、無知と無謀と無思慮。
知恵とはかけ離れている。
そこがいいのだろう。
まさに、人間的。
年老いて愛を演じるのは、
私にはできないが、愛の応援くらいならできる。
この方の劇も、見方によれば、ただのエロ爺かもしれないが。