学生の頃、友人の中にAがいた。

私と同じ学生アパート(全室3畳)で3歳年上。

Aは8回生だった。

卒業に必須な単位が残っているのに、

Aには卒業意欲がなかった。

 

もったいないと、友人たちが支援。

やっと卒業できた。

卒業後は、東京で日雇いの仕事。

作業員の飯場のようなところから何度か手紙が届いた。

 

その頃の私は、中退して不安定な生活で、

手紙の返事もしなかった。

 

Aの父は土地の変わり者で、

戦後の解放された雰囲気の中、

天皇陛下万歳というような幟を立てて、

郷里中を駆け巡る国粋主義者。

 

Aから何度か父についての話しを耳にし、

父への強い反発の気持ちを感じた。

 

50年近く経ち、

Aが、その後、どうしているのか気になり、

ネットで調べてみた。

 

すると、郷里に帰省。

父のあとを継いで、神社の神主になっていた。

その地では有名人だ。

 

尋ねて行ってみようかと、

しばらく思ったが、

やはり、面倒。

距離が遠すぎる。

 

写真でみると、昔の雰囲気が残っている。

たぶん、今もあの口調で、あの動きのままだと

感じた。