<自由な学生生活の延長で生きる>

−−−−京大生で就職先など悩んでいる人も多いと思います。

 京大生そんなに悩まないでしょう。

 

−−−−いえ、今は京大生だからって採用される時代じゃないです。

 違う違う。学生の生活の土台がね、普通の大学に行ってるのと違いますから。

 

−−−−違いますか。

 違いますよ。例えば吉田寮に住んだりしたら、月々数千円で生きていけるじゃないですか。実際に寮に行く人は少ないですが、そういうことができるくらい、他の大学と比べてもライフスタイルが自由です。その土台があったら、働くということに対してもかなり自由度があがる。京大生が苦労しないというのはそういうことを言ってるんです。授業も出ないで、部活やサークルなんか遊びほおけることができるじゃないですか。そうやってあまり勉強しなくても卒業できたりするのは京大生の強み。それが生きてくるんです。

 京大的な自由な生き方が学生時代にできるのは貴重なことです。ところが文部科学省はなるべく縛りを厳しくして、意味のない学部はなくすとか言っている。

 みんな学生時代はやりたいことをやったらいいです。その延長で、その後も生きていけばいい。それはね、やりたいことが間違っていてもいいんです。間違っていても、本当にやりたいことをやっていれば、どこかで修正される。でも、やりたくないことをやっていたら、修正がききにくいんです。だから、自分の体が動いていく方向を目指します。それを、体の面で淡々とやっていくのが、気功なんです。こんな感じだなあというのをそのまま出して行く。そういう経験って日常で意外と少ないわけですね。それを習慣化していく。あ、こっちの方に動いたら気持ちいいなというのを、そのままやっていく。どんどん力が抜けていく。これがなかなかいいぞ。そのままやっていく。楽な方へすっと動いていく。毎日充実する感じを作っていく。それをそのままやっていく。そこに、一定の技術がからんできます。それはふつう技術と呼ぶほどのものではないのかもしれないけれど、例えばゆっくり手をなでるとか、それがどれくらいゆっくりかを体験すると、技術であるということがわかってくる。ゆっくり首をまわすといっても、普通のゆっくりじゃなくて、気功では一分、二分、場合によっては三分や四分かけてまわしてもいいのです。そうすると、全然違った質の体験が起こる。それは体と向き合わざるを得なくなるからです。体の欲求に外れていると不快になってくる。いかに体の本心とコミュニケーションを取っていくかが、気功の核心です。だから、単純なことを十五分くらいやって、それを一週間続けるだけでものすごい変化が起こってくる。

 日々真剣に生きるのは大事ですよ。その瞬間に悟るかもしれない。世界が変わるかもしれない。それは、何か努力して打ち立てていくものじゃないんです。もともとあるもの。その充実した世界に、ぱっと入っていくことができるんです。あるから。作るものじゃないんです。引き寄せの法則がはやっていますが、幸福を引き寄せるという考え方はあまり望ましくない。あるんです。引き寄せなくても。引き寄せようとしないのが、幸福になっていくキーポイントなんです。無理に幸せになろうとせず、手放してしまうんです。

 就職は、ぴんとくるところへ行ってください。ある意味、勘です。仏教的なことばを使えば、縁があるところに行けばいい。そうしたら、頭で動いていなければ、必要なことをそこで学ぶことができます。そこで給料を得るとかいうことではなくてね、そこで何を学ぶかなんです。遠回りでくだらないことのように見えても、振り返ってみればすごく大切なことを学んでいたということがあるんです。最初からかちかちに考えないで、なんかここ呼んでるぞ〜と考えたらいい。なんかピンと来たところです。それも恋愛と似てるんですよ。あ、なんかこの人とピンときた感じを大事にする。それが、どうなってもいいということです。最初の就職先に一生涯勤めるという時代でもないですからね。どう変わっていってもいいんです。その自由度があってはじめて本当の学びが起こってきます。恋愛もそうです。その人と一生涯付き合わないといけない、その人の家庭を一生支えないといけないということじゃなくて、いつ別れてもいい、いつまたその充実した関係が戻ってきてもいいという状態で、付き合うんです。恋愛だけに限らない。あらゆる人間関係に同じことがいえます。ただ、男女間は子孫を作ることが強力に働きますから、引き合う力が大きい。だから逆に難しい面があるわけですね。

 就職を恋愛と考えたら、向こうがほしいけどこっちが見向きもしていないということがあります。そういうところも開拓してほしいですね。全然目につかない、そんなところ就職先としてあるんかな〜というところに京大生が入ったら大きな力になるんです。大きな企業に入ったらぺーぺーですが、そういうところに入ったらいきなり主任ですよ。そうやって動かしていくことができる。

 

−−−−京大生は大企業を志す人が多いように思いますが。

 それも全然いいんですよ。それも一つの恋愛のパターンです。私自身ね、いくつか受けましたけれども、企業のデータを比べてもわからないところがあるじゃないですか。それで昔、 河原町の母と呼ばれる有名な占い師が、四条河原町の角にいつもいたんです。占ってもらったら、「大きな船に乗りなさい」といわれ、一番大きなところにしたんです。そんなもんです。どこでもいいんです。ご縁があれば、両想いであれば。

 

−−−−最後に、京大生におすすめの気功を教えてください。

 「心がおちつくやさしい気功」の動作は全部で10あるのですが、全部が出来ない時は、ゆっくり首をまわす動作をやってみてください。まず頭をぶらんと前にぶらさげて、一度ゆっくり息を吐きます。それから頭の重みで自然にころがっていくように、ゆっくりゆっくり、スローモーションのように回っていきます。後ろに頭が倒れるときには、あごがゆるんで口がポカンと開きます。回数は考えずに、淡々と気持よく好きなだけ回して、適当なところで反対向きに回します。こうしてゆっくり首をまわしていると、今まで気がつかなかった凝りや疲れや痛みなどに気づくことがあるかもしれません。そうして無意識に抱えているものが表面に現れてくることから変化ははじまり、一気に首がほぐれてきます。首は頭と体とをつなぐ重要なポイントですから、首がほぐれることで、頭に上っていた気がおりて頭がポカンとして楽になるし、体が頭の一方的な指令から自由になって、体も不思議なほどすっと変わっていきます。京大生は頭を使うことは得意でしょうから、この首まわしを覚えておくだけで、いろんなときに役に立つだろうと思います。ポイントはゆっくりです。現代は、より速くと、スピードを求めがちですが、手速く作業しようとすればするほど、仕事は雑になりがちです。その逆に、ゆっくりにしてみると、まず余分な力みが消えます。そして今まで気づかなかったことに気づきだし、ていねいで質の高いことができるようになります。いちど質の高いゆっくりを体験すると、今度は、その質を保ったまま速くすることもできるようになります。ゆっくり動くと、体とのコミュニケーションの情報量が圧倒的に増え、体との対話が深まるので、次々に変化していくのです。

 「心がおちつくやさしい気功」は、まずは動画を見ながら気楽にやってみてください。最低7日間続けてみることをおすすめします。京都造形美術大学の通信の授業でも体験してもらっているのですが、23日やってみている間はまだ新しい質の動きに馴染んでいる段階であまり変化が感じられないのですが、45日経った頃から体の変化に気づき出し、たった7日間で人生が変わるような経験をされる方が何人もありました。気功は、一生懸命に頑張ろうとする方向とは逆の方向に進んでいくのです。楽な方へ気持ちが良い方へ、自然に動いていく。それは、全ての動物に共通した自然な方向性で、生命の基本的な性質とも言えるでしょう。その原点の自然へと、回帰していくのです。