日刊工業新聞( 2017 年 12 月 10 日号)

「原子力産業は絶滅の危機?」

 

「自然エネルギー財団」が8日に行ったシ ンポジウム

「世界の原発の現状と展望」で発表された。

 

「世界原子力産業 現状報告2017」の筆頭著者マイケル・シュナイダー氏の発表。

  独立した原子力政策コンサルタントであるシュナイダー氏は、すでに原発がピー クアウトしている(峠を越えている)とするデータを示した。
 
概要は次の通り

〇原子炉数ピーク 2002 年 438 基

〇運転容量ピーク 2006 年 368.2GW(ギガワット)
〇発電シェアピーク(全電源設備に占める原発の割合)1996 年 17.5%

〇発電量ピーク(全世界で作られた電気に占める原発由来電気の割合)  2006 年 2660TWh 〇新規稼働ピークは 84と85 年(30 基以上/年)。

  2015、16 年はともに 10 基。年 10 基は 90 年以来の低さ。

 
 2015、16 年の新規は中国。

過去 15 年、新設のほどんとが中国だった。

だが 2017 年の中国の新設はゼロ。

 全世界で建設中の原発は 53 基。うち半分以上の 37 基に遅延が発生。

2007 年から 2017 年7月に稼働した原発は 51 基、建設期間の平均は 10 年。

中国は 27 基を稼働させた。建設期間は平均6年。

  日本の稼働は1基(泊3号機)、建設に 5.1 年をかけた。

米国も1基(ワッツバー 2号機)だが、43.5 年を要した。

東芝.ウェスチングハウスの破綻で明らかなよう に建設は長期化し、コストが膨らむ。また米国では 60 年運転の許可済.申請中の 原発のほとんどが 60 年間運転はせず、途中で停止、停止予定となっている。

 

記事の「結論」は、原子力産業の衰退は地球規模で加速。

2017 年に建 設が始まった原子炉は1基(第三四半期まで)。

原発が生き残りに必要な最低限の増加率 を下回っており、原発は絶滅の危機に瀕していると指摘する。

 
 なお、同様の報告は「原子力産業現状報告 2017 世界の原子力開発についての独 立した立場でのアセスメント」として原子力資料情報室、グリーン・アクション 等が 12 月7日に開催した公開シンポジウムでもされている。