高校時代に、一目ぼれした同級の女性がいた。

校舎が別棟なので、渡り廊下で出合うだけ。

毎日、顔を見るのが楽しみだった。

なぜ、ラブレターを渡さなかったのか、

今思うと、不思議。

 

ラブレターには、強い思いが必要。

ラブレターを書かないということは、

それだけの思いがなかったのだろう。

 

この人とは、還暦の同窓会で42年ぶりに再会した。

昔と印象が変わらないので、びっくり。

昔の思いを、思い存分、伝えた。

これですっきり。

 

一般的に、付き合った女性と浅い関係で終わるのは、

深い愛がない証拠だろうか。

それとも縁がないのだろうか。

 

22歳で妻と出会うまで、

好きな人はいたけど、関係は進展しなかった。

当時は、私自身に問題がいろいろあり、

愛どころではなかった面も。

 

高校からの友人で、休みに帰省するたびに、

おしゃべりを楽しむ一年後輩の女性がいた。

ラブレターではないが、手紙のやり取りもある。

お互いに信頼し、仲良しの友人。

恋人一歩手前の関係。

共通の趣味や関心があり、話して楽しい間柄。

我が家の自室で、二人してブランデイを一本空けたこともあった。

 

多分、二十歳前の頃。

夏休み、二人で近くの観光地の城山にハイキングした。

登りと下りは同じ道。頂上は城跡。

約1時間、すれ違う人もいない山道を歩く。

 

ハイキングの前に決心していた。

今回こそ、彼女とキスしようと。

 

登り・下りの山道をたどる間、

あの角まで行ったら実行しようと、

心の内で何度も繰り返し思った。

しかし、最後まで実行できなかった。

 

キスの仕方を知らないほど、

うぶだったのだ。

 

それから程無く、他の女性とキスする機会があった。

キスは簡単だった。

ベンチに座るか、または立ったままでもいい。

お互いに見詰め合って話すか、手など触れ合い、

なんとなく、そんな雰囲気になれば、

自然とできるもの。

 

うぶな私は、りきんで、緊張して、

がちがちだった。

帰りの電車の中で、

一日のデイトの総決算のように、

唐突、彼女へ結婚しようと言った。

 

前触れもなく、にわかに、

そんな重大事を提案されても、

応じようがないのは当然。

彼女が何と答えたのか、忘れてしまったが。

 

つづく