がん予防 | 園原健弘 アドベンチアーズ!

がん予防「野菜の効果」は限定的 英の研究基金が報告書

2007年11月24日12時30分

 がん予防のためには、野菜を食べるだけでは安心できない――。世界がん研究基金(本部・ロンドン)が公表した報告書で、こんな評価が出た。10年前にまとめた最初の報告書では、野菜の摂取は肺など5種のがんについて「確実にリスクを下げる」と5段階で最も高く評価されたが、今回は急落。胃などについて、「恐らく確実にリスクを下げる」とされるにとどまった。代わって浮上したのは「適正体重の維持」だった。

 97年の初版は各国のがん対策に反映されており、今回の報告書も影響を与えそうだ。

 報告書は、生活習慣とがんに関する研究のうち、この10年間に発表された3000件を加えた計7000件を解析。野菜、肉、アルコールの摂取や運動などが、がんにかかる危険性と関係する程度を、5段階で評価した。

 10年で最も大きく変わったのが野菜への評価。初版で野菜が「リスクを確実に下げる」とされたがんは、口腔(こうくう)、食道、肺、胃、大腸。「恐らく確実に下げる」が喉頭(こうとう)、膵臓(すいぞう)、乳房、膀胱(ぼうこう)。多くのがんの予防につながるとされた。

 それが今回、「確実に下げる」はゼロ。「恐らく確実」も口腔・咽頭(いんとう)・喉頭、食道、胃の各がんにとどまった。

 果実も似た傾向。前回は8種のがんにかかる危険性を「確実」「恐らく確実」に下げるとされた。今回は、胃など4種のがんの危険性を下げるのが「恐らく確実」だった。

 その一方で危険因子として浮かび上がったのが「肥満」(日本では体格指数=BMI25以上)で、食道、膵臓、大腸、乳房(閉経後)、子宮体部、腎臓の各がんで「リスクを確実に上げる」とされた。

 ただ、一般的には野菜を多く食べ、運動することで「肥満」を防げるとされる。

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 ●坪野吉孝・東北大教授(疫学)の話 過去に例がない大規模な研究分析で、信頼性は高い。ただ、肉類の摂取量などは欧米と異なるため、日本人向けに独自検証が必要なものもあるだろう。