10月初頭に院試を受けた。8月末の1週間が願書受付期間で、結果発表は受験日から2週間ほどのちだ。これを書き起こしたのは院試から一週間ほどたってからであり、かといって、試験当日に関してはメモを書きとめてあるので、記憶が薄れていることはない。院試に向けての勉強の仕方や本番の手応えなどをここに覚書として残しておこう

 書いているうちにナラティブになってしまったが、教訓やアドバイスを簡潔に述べただけではあまり意味がなかろう。院試は分野によって千差万別なので「この勉強法はこう!」というような決めつけはせず、私個人の経験談としてここにあげ、どこを参考にするかは、読者のみなさんに委ねたい。とまれ、院進を志す人の助けになれば

 

院進を考えるまで

 

 まず、私の素性について。東京の私大に通う者だ。文学部にある広く芸術史(美術、音楽、演劇映像)を取り扱う学科で、なかでも私は日本美術史を専攻している。

 いつから院を志望したか、これはやや難しい。入学した時点で漠然と学芸員になりたいとは思っており、美術史に対するモチベーションはコンスタントだったが、実際に院試をふくめた具体的な院進を考え出したのは、4年生の5月頃だろうか。おそらく、というか、かなり遅いほうだ。私はそのせいで焦った。が、焦っても仕方ないので、結果的にはやれることはやったかな。

 

 学部と院では専攻をかえることにした。入学当初は江戸絵画をやろうと思っておりゼミにもぐっていたりしていたが、いろいろ展覧会をみているうちに仏像史をやりたくなった。おおかた3年の前期あたりから仏像への関心が再来しはじめたと記憶する。3年生の後期には彫刻史の先生のゼミにもぐったりもした。もともと両方とも好きだったので知識量の壁はそこまで大きくはなかったように思う(もちろん何でも知っているという自信の表れではなく、鞍替えし院試の問題を解く分には足りるかなという意味である)。いま考えると何のことはないが、先生に専攻をかえることを事前に伝えるのは少しためらいはあった。彫刻史の先生にお伝えしたあと、絵画史の先生にお伝えしたらにこやかに反応してくださった。まことにありがたいかぎりである。

 

研究計画書

 

 具体的に院進を考えたら、まず大学公式サイトに貼ってある募集要項を印刷した。参照すべきは願書として何を郵送すればいいか試験はどんな仕組みなのかのふたつであった。

 願書はもろもろの大学で異なるだろうからその子細をいちいち書かないが、願書の必要書類のなかに研究計画書なるものがあった。院試は秋と春の二回実施される。私は秋の10月を目指したわけだが、その時点では卒論ができあがっていないのでその代わりとしての提出らしい。春は卒論を提出するのだ。私の場合、専攻をかえるものの卒論は絵画史のゼミで書こうと思っていたので、むしろ計画書を書かなければ入ったあとで苦しくなるだろうから、書いてよかったとは思う。

 要項には8000字以内とある。労力でいえば、試験勉強よりもこちらのほうがはるかに大変であった。だいたいのプロットとしては、先行研究をまとめそれらについて問題点を指摘し、③自分が研究したいことを述べ、④どのような方法でそれを進めるかを書けばよい。言うは易く行うは難し。すでに研究したい分野の論文は数多く読み、アーカイブもしてあったのだがそれらをアウトプットしたり、研究テーマにどのような意義があるのかを明文化するのもひと苦労だった。もし行きづまったら、博士論文の序章をみることをオススメしたい。博論の序章もさきに示した①~④のプロットで長い長い博論(研究)を総括しているから参考になる。3、4週間ほど苦心しながら書き上げて、8月中旬に先生に添削をお願いした。ほどなくして返信。書式、内容に関して赤がついたが、根幹の要旨に改変はなく苦労なく脱稿。結局、第1稿と文字数はほぼかわらず6500字で、8月末の出願期間に願書とともに郵送した。

 また、郵送後、講義で面識をえた非常勤の先生に、計画書をみていただいた。面接で何をきかれるかについて知りたくて、もう一度、人の目を通しておきたかった。ほどなくして気になった点が箇条書きになって返信。まことにありがたいかぎりである。

 

 ここまででいえることは、まず院進を考えているなら、はやめに行動することだ。私の場合、専攻したいことを学科の先生のもとでできそうだったので外部を受けていないが、もし外部を受験するとなれば、確実に間に合っていなかっただろう。もうひとつ、ふだんから勉強することだ。研究計画書を書く時も、ふだんから論文を読んでいたので、それらをまとめあげる作業から始められたのはよかった。もし、書き始めるために論文を集めはじめるようでは、内容の質は格段に違っていただろう。