看護師をやめ、ニートにいたった私ですが、
毎日ほぼ寝る、プライムかネットフリックスを見て、夜客を相手に生活。
ただお金はもらえないわけであり、この生活で、夜職のために私は存在しているのかと思うようになった。
生きる目的が夜職なら、生きていたくないと。
夜の社会に侵食されるのはこういうことなんだと、再自覚するようになった。
友達に会うことも夜職だけになった私は、穢れすぎて会いにいけなくなった。
そのうち、話すことさえできなくなった。
着実に体重のみ増え80㎏のラインでちゃちゃとして接客していた時だった。
男3人と私1人。
私は、3人の男に拘束されていた。
手も足も動かない、そして呼吸が苦しい。
これは太って横隔膜が肉で埋もれて肺が圧迫しているからだと考えていた時だった。
男3人をみると私の身体にオペで使用するメスで切り刻んでいる。
いや、文字か、絵を刻んでいた。
痛みよりも、
“あーそんなところ切られたら、もう白衣は着れない。昼には戻れないのか。
もう誰にも、会いたくない。もうそろそろ、きついや…”
と思った。
意識が遠のいていくのがわかった。
息苦しさから、だんだん息ができるようになり、
身体の脱力感がやや改善されたような感じがした。
"あ、気絶したのか?また怒られる。"
なんで死ねなかったんだろうと、恐る恐る目を開けた。
緑が目に入った。
森の中のようなドーム状の部屋のような空間。
真ん中の大きな白いベッドに横たわっているようだ。
周りには、カスミソウのような小さないろんな色の花が咲いている。
なんて、メルヘンチックな夢なのだろうと思った。
その直後急に思い出す恐怖、仕事中であったと。
こんな夢はやくさめなければ、苦しみが何倍にも広がる。
しかし、目を何度瞑って開けてを繰り返しても、目覚めない。
同じ森の空間。
とりあえず、起きて出口を探してみようと、起き上がろうとするが起き上がれない。
力が全く入らない。
いや、おなかの肉が邪魔で起き上がれないのかも、しれない。
赤ちゃんのようにハイハイで動けるか、と挑戦するがビクともしない。
そんな己の身体と闘っていると、
扉などないと思っていた、森の空間の扉が開いた。
よく見ると、たしかに扉はあったようだ。
木の取っ手で回りが草木に覆われており、わかりずらくはあったが…。
「気が付いたんだね、大丈夫かい?傷だらけだったから、薬草を採取してきたんだよ。」
180㎝くらいかな?
イケメンの部類に入る細身のすらっと脚長さんが、ザルにヨモギのような葉っぱてんこ盛りで、私のそばに近寄ってきた。
いや、イケメンなんだけど、
農家のおじさんのように長靴に軍手で麦わら帽子を脇に挟んでいるからか、
なにかがしっくりこない。
いや違う。
そこではなく耳がついているのだ。イケメンなのに耳がついていることに違和感を感じたのだ。
モフモフの真っ白な耳…。でもそれ以外はただの人間のように思えた。
「僕の言葉、わからないのかい?」と、顔を覗き込むように彼は言った。
あ、とりあえずお礼いわなきゃ。
状況がわからないにしても、
薬草つんできてくれたみたいだしお礼だ、お礼と思い、
「あ、あ、ありがとうございます…助けていただいて。」と口にした。久しぶりに人と会話した。
人ではないけれど、人のような人と会話した。
彼は「言葉、大丈夫だね」とにこっと笑い、
ヨモギを石のようなもので細かく刻み、潰し始めた。
私はふと、気づいた。いや、気づくのが遅すぎた。
全裸で横たわっていたのだ。
それに傷だらけというか、血だらけで…。
白いベッドが赤い血で、いややや茶色くなった血で汚れていた。
記憶をたどった。
たしか、字か絵を描かれていた。
今は血が流れているせいで、文字が見えないけど…。
足首と手首に、拘束具の擦過傷が残っている。
恥ずかしさと恐怖が一気に襲い掛かってきて、いつの間にか涙が出ていた。
涙というより、息がしずらい。
頭の中で、ゆっくり呼吸しなきゃと思えば思うほど、
過呼吸が重症化していく。
あ、助けてくれた人にまでこんなに怖い思い、迷惑かけていまったな…
暗闇に落ちた感覚で視界が真っ暗になった。
気が付いたらまた森の中で、
横になっていた身体は起こされており、彼の心臓の音がなっていた。
あ、お日様のにおいがする。
抱きしめられたことで、我に返りなんとか呼吸を正常に戻すことができたようだ。
彼は、「大丈夫。大丈夫だよ。ゆっくりでいいからね。大丈夫だよ。ここは何にも怖くないよ。」
そう繰り返していた。
私を抱きしめ、頭をさすりながら。
落ち着いたころ、彼を見ると血だらけだった。
私のせいで血が…
「ご迷惑おかけして、血で汚してしまってごめんなさい」。
そう伝えると、
「大丈夫、作業着は汚すためにあるのだ。」と、満面の笑みを彼はうかべた。
久しぶりになった過呼吸、そして久しぶりに、いや始めて客でない人に抱きしめられた。
あったかかった。
ほかほかしいてて、ずっと包まれていたい。
そう思えるぬくもりだった。
気づくと彼は、薬草を潰す作業に戻っていた。
私は彼がかけてくれた着物のような羽織に手を通し、腰のところについているひもを結んだ。
少し気分が楽になったような気がした。そして、
「私の夢の中だから、そんなに一生懸命薬草つぶさなくて大丈夫ですよ。」と彼に声をかけた。
彼は不思議そうな顔をして「君は何を言っているの?ここはナラリリア国の首都ナラリリアだよ?」。
え…???
頭が?だらけになり、混乱した。
私、これぞ転生?念願の転生だよね?
え、ならあっちではもう死んだのかな?あ、まだ新発売のモンブラン食べてなかったのに…
。でもこれで、税金年金保険、いろいろ考えなきゃいけないお金がないお金に追われてた生活に区切りつけれたんだよね?
それより夜と縁が切れた。
いきなり終わりはきた。
終わりなんて希望は私には夢見る資格も何もなかったのに…。
涙は目から、雨は天から。晴れない空はない。いつか涙もとまる。終わりはくる。
どんなに選択肢がない状況下に置かれていても、
こんなどんでん返しが来ることもある。
それも生きているからこそ。
私今度こそ、自分の足で、
自分のために、自分だけの人生歩めるのかな…?歩みたいな、自分だけ自分で描く物語を…