- 彼女の命日/新津 きよみ
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「あなたの大切な一日、私に下さいませんか」
―三十五歳の会社員・楠木葉子は、
父亡き後、母と妹を養ってきたしっかり者。
結婚を考える恋人もいる。
そんなある日、葉子は、帰宅途中、胸を刃物で刺されて死亡した。
が、一年後、山の手線で別の女性の身体を借りて、この世に戻ってきた。
葉子は恋人のことを気にかけながらも、
母と妹が住む自宅へと向うが、そこで待っていたものとは…。
現代に生きる女性の揺れ動く心情を繊細に描く、
切なく優しくサスペンスフルな傑作長篇。
――――― 「BOOK」データベースより
個人的評価 : ★★★★☆
3つ寄りの4つ。
一年にたった一度だけ戻れるというのは辛くて哀しいよな……。
生きている自分の最後の記憶は痛み。
自分が死んだのだということをようやく納得できたとしても、
一年おきに見る家族や友人の姿、その変化。
遺された(生きている)家族のことを想う気持ち、
新しい道を、それぞれの幸せを歩いていくことは
決していけないことではなく、
自然なことでもあると頭では分かっていても、
自分だけがそこから取り残される寂しさも当然あって。
生前から少し行き違う部分のあった妹の言動にイラついてしまう、
というのも分かる。
葉子がああいう人なだけに、余計に切なくて。
生きている間も、死んでからも
自分の身に降りかかった悲劇をただ嘆くわけでなく、
一日身体を借りた相手のことを一年後に思いやることもできる人だから。
葉子が殺された事件についてだとか最後が少し物足りないかも……、
なんて思ったりもしたけど、わりと面白かった。