- 首都感染 (100周年書き下ろし)/高嶋 哲夫
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20××年、中国でサッカー・ワールドカップが開催された。
しかし、熱狂するスタジアムから遠く離れた雲南省で、
致死率60%の強毒性新型インフルエンザが出現。
中国当局による必死の封じ込めも破綻し、
恐怖のウイルスが世界に、そして日本へと向かった。
インフルエンザ・パンデミック(世界的大流行)阻止のため、
政府対策本部のアドバイザー・元WHOの優司は
空港での検疫を徹底させるが、
ついに都内にも患者が発生。
総理の瀬戸崎は空前絶後の“東京封鎖作戦”を決断した。
――――― 「BOOK」データベースより
個人的評価 : ★★★★☆
5つ寄りの4つ。
面白かった。
面白かったんだけど、
「面白かった」という表現に少し躊躇う気持ちもある。
地震・津波・原発事故と新型インフルエンザという違いはあれど、
現実と重なる部分が色々あって。
例えば、想像(準備)していた以上の災厄に混乱する様子。
現実の地震や津波にしても、描かれてるパンデミックにしても、
警鐘を鳴らし続ける専門家はずっといて、
そういう人たちや国や自治体も何も手を打っていないわけではなくて。
それでもその備えを遥かに超えていく事態に混乱する様子。
買占めだったり、該当地域からの脱出だったり。
他にも危険を承知で自分の責務を全うしようとする人たち。
自分の命や健康の保証もないままに、
現場で人を助けるために、被害を拡げないために必死に闘う人たちの姿、
そういう人たちが傷ついたり、苦しんだり、亡くなるシーンはやっぱり辛い。
描かれてた中では震えていた警官の様子も辛かった。
彼がしたことは、感染を拡大させないためには必要だったんだけど、
頭ではそう判っていても、精神的にはとんでもない重荷だ。
「死を数として扱うしかないって、とても怖いこと」という元妻の言葉も。
自分が今、そういう部分があるんじゃなかろうかと思わされた。
亡くなった方や行方のわからない方の人数が想像を絶するもので
ニュースや新聞で目にする度に麻痺してしまっているかもしれない、と。
現実がこれほど上手くいくかというとまた別の話ではあるんだろうけど、
冷静さと大胆さを兼ね備えた
リーダー・指導者・責任者の重要さもよくわかる。
自分の経験と分析と判断に自信を持って正しく進言できる専門家、
それを聞いて非難を恐れず
素早く必要な手を打てる総理大臣、厚労相、病院長、
たくさんの命を護る、救うために
大胆な決断が出来る企業・会社のトップなどなど。
派手に恐怖やら混乱を煽る書き方じゃないのが逆に恐ろしさを感じる。