エンリケ・コリーナ(1944年4月27日~2020年10月27日、ハバナ出身)
映画監督、映画評論家、教育者
ハバナ大学スペイン語圏・フランス語圏文学専攻
テレビ番組「24 por segundo」で、映画の指南役を30年以上務める。
(同番組で映画の魅力を知った人は多く、国民に多大な影響を与えた)
1984年、ドキュメンタリー映画『Estética』で 監督デビュー。
作品の特徴:ユーモア、痛烈な皮肉、日常に対する辛辣な眼差し
ただし、その鋭い批評性ゆえに上映されなかった作品もある。
フィルモグラフィー(表記のないものはドキュメンタリー)
1984: Estética
1984: Yo también te haré llorar
1986: Vecinos
1986: Jau
1987: Chapucerías
1987: Más vale tarde que nunca
1988: El Unicornio (短編フィクション)
1991: El rey de la selva (短編ドキュドラマ)
2002: Entre ciclones (長編フィクション)
2011: Los bolos en Cuba y una eterna amistad
2013: La vaca de mármol
2016: Cuba: oferta especial, todo incluido
コリーナ本人の言葉:
私が作った数々のドキュメンタリー作品は、この国の問題を映し出しているが、それらの問題はすでに80年代から存在し、悪化して今に至っている。
私は映画評論家であるまえに、この国に生きる一人の人間であり、ごまかしや偏見なしに現実を見る人間で、それゆえに苦い落胆を味わいもするが、それは私を鈍らせるどころか、むしろ抗議へと向かわせる。私としては、何ら例外的なことをしていると思わない。私には意見があり、それを表明するのは私の権利だ。
残念ながら、こうした態度はあまり広まっていない。思うに、我々は基本的な市民感覚を発展させてこなかった。革命的であることが、実際には服従すること、指導に従うこと、割り当てられた仕事を全うすることとなった。その一方で、自分の頭で考え、発言し、首尾一貫した行動をとることが、民衆を扇動するレトリックだとされた。
まもなく私も指導的立場にある者たちも死ぬだろう。そのとき我々は自問することになる。この国はどうなる?と。我々にはどんな責任があるか?表現手段を持っていながら、自分の現実に背を向けることが私にできると思うか?これは権利である以前に義務なのである。
以上、こちらを参照してまとめました。
Marysolより
FBの投稿で訃報を知ったのは一昨日のこと。
誰もがその人柄と作品を讃え、テレビ番組「24×segundo」に感謝を捧げていました。
さらにわが師マリオ先生は「自分の35年に渡るICAIC在職中、最も勇気のある男だった」とコメントしていました。
*コリーナ氏と日本
ところで、コリーナ氏は、日本映画の買い付けに2回来日しています。作品選定の方針は「文化的多様性の提供という枠組みのなかで、人々の娯楽に奉仕し、しかもプロの作品としてふさわしい質と芸術性を備えていること」でした。
また、キューバで最も有名な日本人、イチこと勝新太郎がキューバを訪問した際は、人気番組「24 por segundo」に出演し、コリーナ氏のインタビューを受けたとか。「謙虚で、誰に対しても分け隔てしない優しさが忘れられない」と、後年コリーナ氏は勝さんの印象をマリオ先生に語ったそうです。
謹んでご冥福をお祈りいたします。
追記(11月2日)
コリーナの人気番組「24xsegundo」に出演した時の勝新太郎の様子を、当時 同番組でコリーナのアシスタントをしていたカルロス・ガリアーノ(映画評論家)が次のように書いています。
まず最初に思い出すのは、日本の俳優、勝新太郎とのことだ。あの人気の盲目の剣客を演じた勝がキューバを訪れたときだ。インタビューの最中、コリーナはいきなり(事前の申し合わせもなく)勝に頼んだのだ。「座頭市シリーズの観客を驚嘆させた、あの立ち回りをやってみせて欲しい」と。勝は気軽に応じると、たちまち座頭市に変身し、カメラの前で洗練された殺陣を演じて見せた。番組は上出来。あれこそテレビだった。