『イノセンシア』 2018年 | MARYSOL のキューバ映画修行

MARYSOL のキューバ映画修行

【キューバ映画】というジグソーパズルを完成させるための1ピースになれれば…そんな思いで綴ります。
★「アキラの恋人」上映希望の方、メッセージください。

『イノセンシア』 2018年/キューバ/121分/歴史ドラマ

            *イノセンシアとは無罪・無垢の意味。

             

監督:アレハンドロ・ヒル

脚本:アミルカル・サラッティ

撮影:アンヘル・アルデレテ

音楽:ファン・アントニオ・レイバ、マグダ・ロサ・ガルバン

 

出演:ヤスマニー・ゲレロ(フェルミン)、ルイス・マヌエル・アルバレス(アナクレト・ベルムデス)、フスト・セサル(ホセ・デ・マルコス)、レイニエル・ディアス(アンヘル・ラボルデ)、カルロス・ブスト(アロンソ・アルバレス・デ・ラ・カンパ)、アンヘル・ルス(ファン・パスクァル)、アマウリ・ミラン(カルロス・ベルドゥゴ)、リカルド・サアベドラ(エラディオ・ゴンサレス)、

クラウディア・トマス(ローラ)、エクトル・ノア(志願兵部隊長)、ヤディエル・フェルナンデス(ハバナ知事)、ヤレミス・ペレス(フェルミンの妻)、オスバルド・ドイメアディオス(フェルナンデス・クバス教授)、フェルナンド・エチャバリア(エラディオの父)、ネストル・ヒメネス(セバスティアン=印刷所長)、ヤイレナ・シエラ(アロンソの母)、パトリシオ・ウッド(検事)、カレブ・カサス(軍司令官カプデビラ)、サムエル・クラストン(墓堀人・クラウディオの父)、ホルヘ・エンリケ・カバジェロ(クラウディオ)、エドウィン・フェルナンデス(志願兵)、カルロス・ソレル(志願兵)、ライ・クルス(マヌエル・アラウホ)、オマール・アリ、ホルヘ・トレト、ニウ・ベントゥラ、

 

あらすじ(ネタバレ含みますが、キューバ人なら了解済みの史実なので)

スペイン植民地下のキューバ。1871年11月、医学部の1年生たちが不当な嫌疑で逮捕され、そのうち8人(16才~21才)が予期せぬ結末の犠牲者となる。犠牲者らの学友で共に収監されていたフェルミン・バルデス・ドミンゲスは、釈放後、仲間の遺体を探し出そうと手を尽くすと同時に、彼らの無実を証明しようとしていた。そして遂に16年後、彼の執念が実る。歴史的事件に基づくフィクション。

 

受賞:2018年ハバナ映画祭にて観客賞、審査員特別賞、シグニス賞(カトリックメディア協会)など

 

 

シネ・チャプリンでのお披露目上映には、政府高官を含む多数の観客が来場し、立ち見まで出る人気!

エンディングで一斉に起きた拍手はいつまでも鳴りやまなかったそうです。

そして、本作はその後何か月もキューバ中の映画館を満員にし、社会現象と化したとか。

2020年度スペイン・ゴヤ賞キューバ代表作(受賞は成りませんでしたが)。


見どころ

 腐敗した植民地の行政官

 東部から迫り来る独立の機運を、恐怖で押さえつけようとする志願兵部隊の横暴 

 見せしめの血祭りの犠牲となる罪のない学生たち。彼らの家族の焦燥と無力感

 不当な裁判に、威厳ある態度で学生を弁護するカプデビラ司令官

 果たして、真の愛国者とは誰か?

 

映画のメッセージ

*監督 

 ・フェルミンは〈誠実さ〉と〈決して諦めない強い意志〉を象徴している。

 ・本作を通して現在と対話し、若者たちを受け入れて欲しい。

 

*オスバルド・ドイメアディオス(クバス教授役)

 この物語は、世界のどこででも、いつの時代にも起こり得る。そのことを観客に認識してもらいたい。

 『イノセンシア』は、野蛮・非道に直面した物語りなのだ。

 

*Marysolとしては、「自由なキューバ」を求める“反乱者”の姿が、「変化」を求める現代のキューバの若者たちに重なりました。

 

付録:鑑賞の手引き&トリビア

★  フェルミン・バルデス・ドミンゲス

本作を鑑賞するにあたり、主人公のフェルミンが、キューバ独立の使徒ホセ・マルティの同志で、しかも2人とも「医学生の事件」の2年前にスペインの軍事法廷で裁かれ、有罪になった事実を知っていると、さらに説得力とその後の歴史的展開への理解が増します!

 

☆ アバクア

医学生の一人、アロンソが〈黒人の乳母がいたこと〉〈乳母の子は兄弟のような存在で、アバクアについても知っていること〉を明かしますが、なぜアバクアに言及したのでしょうか?

アバクアとは、アフリカ起源の男性のみの秘密結社ですが、1868年(事件の3年前)に東部で始まった「第一次独立戦争」が、奴隷を解放し、独立戦争への参加を促したことを示唆するためではないかと考えますが、どうでしょう?

 と思ったら、今読んだ監督インタビューで「アバクアが学生たちを救い出そうとしたという証言があり、現段階では史実かどうか分からないが取り入れた」とのこと。

 

★ エウセビオ・レアル氏の貢献

日本語字幕(分かり易かった!)に出ませんでしたが、エンディングで本作がエウセビオ・レアル氏(今年8月に他界)に捧げられていることが明らかにされています。

これについて監督は、「事件について深く知ったのは、90年代にエウセビオ・レアルと仕事をしたことがきっかけ」で、1992年にドキュメンタリー『イノセンシアス』(10分)を撮ったこと;現代のハバナで19世紀のシーンを撮る困難に「エウセビオ・レアルが可能性を開いてくれた」と感謝しています。

 

☆ 本作中で歌われる「ラ・バヤメサ」について

https://ameblo.jp/rincon-del-cine-cubano/entry-12633912560.html