花森安治とフェルナンド・ペレス監督 | MARYSOL のキューバ映画修行

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【キューバ映画】というジグソーパズルを完成させるための1ピースになれれば…そんな思いで綴ります。
★「アキラの恋人」上映希望の方、メッセージください。

日曜美術館「“暮し”にかけた情熱 花森安治30年間の表紙画」
http://www4.nhk.or.jp/nichibi/x/2016-07-17/31/12617/1902689/


連続テレビ小説「とと姉ちゃん」花山伊佐次のモデルとなった編集長・花森安治。

“とと姉ちゃん”こと大橋鎭子とともに、終戦まもない昭和23年に雑誌を創刊。

30年間、現場の指揮をとりながら、雑誌の顔である表紙画を自ら描き続けた。

美しい表紙画の数々は、戦後の痛手の中、新しい暮らしへと歩み出す人々を魅了し、力づける。

その絵に、花森が込めた思いとは? (上サイトから)


暮らしの手帖 第一号番組の始めに登場する〈創刊号の表紙絵〉―。
朝ドラでチラッと見て知っていたのに、画面いっぱいに映った瞬間、ギュっと心を捕まれました。まず、その色彩に。

あとは何故だろう?

そして番組が進むにつれ、思い浮かんだのが『永遠のハバナ』 の絵を描く老女のシーン。
今プログラムで確認したら、名前はノルマで、ダウン症の少年(当時10歳)フランシスキートの祖母でした。元美術教師。


映画『永遠のハバナ』(フェルナンド・ペレス監督/2003年)がキューバの人々の感動を呼んだ理由について何度も自問自答してきましたが、番組を見ていて、終戦直後の日本の庶民とソ連・東欧崩壊後のキューバの庶民の姿が重なりました。


日本の場合は、戦争に勝利するという国家的目標に破れ、焼け跡に放り出された庶民は自分の暮らしを成り立たせるのに必死だった。
一方、キューバの場合は「社会主義の勝利」という大きな目標がソ連・東欧で壊れ、後ろ盾を失った国民は、極度の欠乏状態を生き抜かねばならなかった。


日々の暮らしに追われているとき、ふと〈美しいもの〉と出会い、心が癒されるという経験は私にもあります。
私の場合は〈子育て〉に追われていたときでした。
子供がようやく寝てくれた、つかの間、ふと手に取った雑誌のインテリアの写真に目が吸い込まれました。そんな経験は初めてでした。

目に映ったのは、陽光に映える白いレースのテーブル掛けと、透明のガラスの花瓶と花。

〈なんてきれいなんだろう〉。一瞬にして心が潤うのを感じました。


日々の暮らしの中にこそ、美があり、掛け替えのない価値がある。


大きな目標が壊れたあと、個人の小さな営みのなかに夢や希望、活路を見出す―。
それに気づかせてくれたのが、日本では花森安治であり、キューバではペレス監督だったのではないでしょうか。


『永遠のハバナ』のプログラムに、わが師マリオ・ピエドラ教授(ハバナ大学)は次のような言葉を寄せています。

苦境にあっても、自らの夢を生き永らえさせ、“美”を創造し“愛”を与える人々の中には“生きる力”が息づいています。


日曜美術館「“暮し”にかけた情熱 花森安治30年間の表紙画」は

明日24日夜8時からNHK Eテレで再放送 されます。


『永遠のハバナ』トレーラー