日本人移民のドキュメンタリー | MARYSOL のキューバ映画修行

MARYSOL のキューバ映画修行

【キューバ映画】というジグソーパズルを完成させるための1ピースになれれば…そんな思いで綴ります。
★「アキラの恋人」上映希望の方、メッセージください。

日本ではテレビや活字を通して<キューバに移民した日本人>の存在は比較的よく知られていますが、キューバではメディアで取り上げられたことはありませんでした。
ところが、このたびキューバの女性監督の手で、日本人移民に焦点を当てたドキュメンタリー映画が製作され、9月16日にシアター23y12にて上映されました。


『EL SOL ROJO EN EL PONIENTE/仮題:西方の赤い太陽』
MARYSOL のキューバ映画修行-el sol rojo en el poniente DVCAM/ドキュメンタリー/57分/カラー/2010
監督・脚本:マリーナ・オチョア・タンダ
撮影:ジャミル・サンタナ・コッシーオ
編集:ペドロ・スアレス
録音:ミチェル・カバリェーロ・アコスタ
製作:ARO Cine-Video;国際交流基金
協力:ICAIC
プロデューサー:ビオレータ・ロンソニ・ガリンド
出演:ダヤナ・エルナンデス・モレノ


内容
中国人移民に比べ、20世紀になってキューバに移民した日本人のことは、ほとんど知られていない。日系キューバ人一世の足跡をたどり、彼らにオマージュを捧げる。


マリーナ・オチョア
1974年、助監督してICAICに就職。
インディペンデント・ビデオグループAROを率いる。
これまでにキューバ内外で数々の受賞歴あり。
代表作:
Blanco es mi pelo, negra mi piel; Del otro lado del Cristal; Julieta busca a Romeo, Las plumas del vuelo del águila y Amor


マリーナ・オチョア監督インタビュー(by ICAIC DIGITAL)
質問:日本人はあまり自分のことを話さないので、ドキュメンタリーを撮るのが難しくなかったですか?それとも子孫たちは、すでにキューバ人化していましたか?


オチョア監督:確かに男性はなかなか心を開かないうえ、カメラの前では尚更でした。
幸い、話題は自分のことではなく、両親だったので、なんとか発言を引き出すことが出来ました。女性の場合も、難しいケースがありました。とはいえ、これまで日本人移民の証言は無かったので、初めてという利点を享受できたことはラッキーでした。


質問:千年以上に渡る(我々から見て)“エキゾチック”な文化をもつ日本人を対象にして、何が一番印象的でしたか?


監督:私は決してエキゾチックなるものに流されませんでした。それは表面に過ぎませんから。常に本質を備えた人間性を探ろうと心がけました。その点で、私たちは皆同じです。同じことに笑い、苦しみ、同じ心配事を抱えています。エキゾチズムは、目に映ったことではなく、それを見ている目の無知によって生じるのです。私たち自身、少なからずエキゾチックな存在だったし、目を引くためだけの文化的産物を生んできました。


質問の答えに戻ると、印象的だったのは、家庭教育がしっかりしていること。貧しくとも道徳的価値を重んじます。これは他の移民グループではあまり見られないことです。
また、これ見よがしでない克己心、仕事を愛する気持ち、家族や国への帰属意識の強さです。


質問:キューバ人は、日本文化といえば武道と映画に親近感を覚えますが、両国間の文化的絆を深めることができるでしょうか? オーディオビジュアルはそのために何ができるでしょう?


監督:武道と映画は異質だし、扱いも異なるべきです。それよりも、グローバル化による“均一化”にも関わらず存続している興味深い文化に分け入るカギとなり得るでしょう。
どちらかと言えば、映画の方がより重要だと思います。かつては黒澤明監督らの作品がその役目を果たしました。今、若者たちの間では、マンガが浸透しており、ヒーローたちの髪型やファッションを真似るほどです。この現象は、表面的なものではなく、ヒーローたちの哲学に共感しているのです。


質問:キューバには、ユカタンや東欧からの移民の子孫がいますが、あまり映像化されたことはありません。次の作品の方向は?


監督:私の好きなテーマは、移民と移民の世界です。移民をする理由は様々ですが、移民の世界に共通な要素に、受入先の国民性や文化との衝突があります。
今、最も興味があるのは、キューバ人自身の移民です。ドキュメンタリーの計画が2本あるのですが、資金調達の道を探しているところです。