佐藤優、高永チョル
2007年 講談社
北朝鮮が連日ミサイルを発射し、制裁を強めるべきだと主張する日本やアメリカ。はたまたロシアやスイスのように仲介を買って出る国もある。どのように動くのが賢いか、行動は全て情報に裏付けされている。
本書は佐藤氏と高氏、2人の日韓インテリジェンスオフィサーの対談によって進められている。佐藤氏は大学を出た後外務省に入省し1995年には外務省国際情報局分析課に在籍した。しかし2002年に背任容疑で逮捕されている。一方高氏は大学を卒業した後、海軍少佐となり国家情報防諜業務を担当し国防省に引き抜かれた。韓国では情報化の中に長らくいて昇進していく人は少なく畑違いの所から異動してインテリオフィサーになる人が多い。
また同じ情報を扱う部門であってもヒューミントを得意とする国家情報院と映像通信収集に長ける軍隊の情報部門は韓国大統領府をトップとして実はライバル関係にある。両者ともに全体を見る島の目、焦点を絞って見る虫の目、そして流れをキャッチする魚の目で情報収集にあたっている。
友好国との情報共有はいかに行っているのか。米韓は軍事同盟を結んでおり、韓国は情報のほとんどをアメリカ軍の諜報衛星と最新型U-2探偵機を通じて得ている。また韓国のみならず各国の大使館に中央情報局CIAに所属する人物が滞在している。それはアメリカ特別補佐官という肩書きで、である。アメリカ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、日本、韓国はエシュロンと呼ばれる盗聴監視機関を設けている。情報は筒抜けである。アメリカは朝鮮労働党が絶対的権力を握っている北朝鮮のインテリジェンス能力は実は一流と認めている。スパイ工作はCIA並みでミサイルも先進国並みとみている。なぜ高度なスパイ工作が可能なのか。それは陸軍中野学校の日本人が戦後も北朝鮮に残りスパイ工作を教えたからかもしれない。陸軍中野学校では暗記して全てを頭の中にしまっておくやり方を基本とするが、北朝鮮の場合は現地の人と結婚し何世代もかけてスパイ工作するため本質的な基本精神は違っている。しかし北朝鮮の情報網に対抗するには陸軍中野学校が過去にどのようなことをしていたか研究する必要がある。
北朝鮮にとって核兵器は日米韓への最後の切り札である。戦わずして勝つためには本格的なインテリジェンス機関を設立し、クリーンなイメージのまま国益と安全保障を維持すべきである。
なぜ日本には国を挙げての情報機関がないのか。スパイという職業もなく、術もない。しかし日本にはインテリジェンスオフィサーがいないと思わせていることが戦略なのではないだろうか。日本がスパイ活動をしないことでアメリカ、韓国、中国など隣国を刺激しないよう配慮しているのではないかと前向きに考えたくもなる。本書は「戦わずして勝つ」為に興味深い一冊である。




