『料理の仕事がしたい』
辻 芳樹
2006年 岩波新書
食の分野で活躍する16人を取り上げ、多岐に渡る料理の仕事について知る本書の目的である。
大阪のトゥールモンド(現アドック)を経営するのは高山龍浩(タカヤマタツヒロ)氏である。店をもつ為には、4.50代までシェフとして雇われ実力をつけるか、早くに店舗を構えてから自分の味を追求するのか2通りの選択肢があるという。高山氏は後者で、25歳という若さで店を持った。フレンチを学んできた氏は素材をどのようにフレンチ風にアレンジするか考える事が楽しいと述べ、人間関係を大切にし周囲からのアドバイスに耳を傾けながら活躍している。
京都木乃婦を営んでいるのは高橋拓児氏である。盛り付け方や切り方などを理論的に学ぶのが現在の日本料理だと言う。三代目となった現在は全体の仕事の流れをつかみ指揮をとる手腕が問われている。今までの伝統を守りつつスタッフに良いと言われた新しい事をも取り入れ、日々切迫感と危機感を持って仕事に向かっているという。
シャネルと料理人アランデュカス氏がタッグを組んで運営するレストランはベージュ東京である。ここで渋谷康弘氏はディレクター兼ソムリエとしてレストラン運営に当たっている。レストランとは事業であり、事業を成り立たせるために計画を綿密に練る必要があるという。夢や情熱を持つことは大切だが、さらに数字を意識した目標を立てなければ店舗運営は出来ないのだ。
本書が出版されたのは2006年である。料理人の世界は移り変わりが激しいという印象をもつ。例えば高山氏は25歳で店を持ったがそれまでに大阪のカランドリエ、リッツ・カールトンメインダイニングラベ、その後シュハリと店舗を変えて働いてきた。またベージュ東京でディレクターをしていた渋谷氏は2015年にワインインスタイルという会社で取締役社長に選任されている。1つのところに止まる必要はない。常にチャレンジしていく精神が大切なのだろうか。