ハルちゃんへ

初めて貴女に会ったのは
3年前、蒸し暑い8月の深夜でしたね

母猫や姉妹から離れて
わずかに開いていた我が家の風除室の扉から入り込み
そのまま出られなくなってしまった
まだ1ヶ月強ほどの小さな仔猫だった貴女は
必死にお母さんを呼んで鳴いていたね

鳴き声を聞いて起き出した私を見て
貴女は生意気な可愛らしい
「シャー!フー!」をしたけれど
その幼い必死の抵抗はあっさりと封じられ
首根っこをひょいとつままれて
仔猫らしく、本能で体をくるりんと丸めた 

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「何ておブスな仔…」

それが第一印象

風除室の外を見ると、お母さん猫が
貴女を「返して」って心配そうに見ていた

「やんちゃもほどほどにね」
と、私たちはお別れしたね











ハルちゃんへ

数日後、貴女が3姉妹であること
近所の餌やりさんの猫が産んだ仔たちであること

そして

誰かが保健所へ通報し
貴女たち姉妹が連れて行かれた事を知りました

あの生意気な威嚇や
くるりんと丸くなった可愛らしい体

貴女を心配する母猫の瞳を思い出して

人の身勝手さが哀しくて
貴女への愛おしさが込み上げて

私は、保健所に連絡をした

貴女たちを引き取るために動物愛護センターで受けた講習で、冷たい現実を知った

県内で年間に殺処分される猫の数は約2,500頭
そして、その9割が
無責任な飼い主が持ち込む生後1ヶ月未満の雑種猫の赤ちゃん…

「仔猫は即処分(育てる事ができないため)」

私は、知らなかった
そんなにも沢山の赤ちゃん猫が
人知れず、死んでいたなんて

昔に比べて、捨て猫は減ったと思っていた
保健所へ持ち込まれるようになっただけだった

りんりんと変わらない月齢の貴女たちを思い

なぜりんりんは生きられて
なぜ貴女たちは死ななければいけないのか

ただただ、これまで死んでいった名もない仔たちに
申し訳ない気持ちでいっぱいになった

講習を終え、3匹も渡せないという職員さんに
1匹だけ選ぶ事など出来ないと頼み込み
何とか貴女たち姉妹全員を引き出したの

必死にキャリーで鳴く貴女たちを連れ帰る時は
安堵と、これからの不安で、震えたっけ

あの時の気持ちは
到底、文章で書き表せる物ではない

私がどんな思いで車を走らせたか、なんて













ハルちゃんへ

里親探しに奮闘し
姉妹たちに次々と家族が見つかる中
一番お顔がブチャイクだった貴女は
なかなか家族が見つからなかったね

でも私は、その味のあるお顔が大好きで

「キミはきっと、うちの子になるねぇ
あの夜に出会ったのも、運命だねぇ」

なんて笑って話していたんだよ
すっかり貴女が可愛くなってしまっていたの

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怯えていた貴女たち姉妹も
日を追うごとに穏やかになり
甘えん坊になって
ふわふわとまーるくなって
本当に仔猫らしく可愛くなっていったね














ハルちゃんへ

里親募集の張り紙をしに行った動物病院の外で
たまたま出会ったご夫婦…

「可愛い!」
と、キャリーの中の貴女を見たママさんが言った
パパさんも、ニコニコと優しそうな方だった

ちょうど猫を探していた、と仰るご夫婦…
猫を飼うのは初めてだと…

本当に、本当に奇跡だった
運命としか言いようがなかった

あの日、あの時、あの場所で
貴女は運命の家族と出会ったんだよ
あの時の感動は、今も忘れることは出来ない

貴女は本当にミラクルガールだった

保健所で名前すらなく命を終えるはずだった貴女が

「ハル」という素敵なお名前をもらって
幸せな猫生を約束された

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ハルちゃんへ

貴女は
最高の家族と暮らし
愛し、愛されて
笑顔も幸せもたくさん運んでくれたんだね

猫のお仕事、小さな体で
しっかりと分かっていたんだね

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ママさんは

ハル、ハル、と
親バカっぷりをSNSで大披露
猫ってこんなに可愛かったのか、と話していたんだよ

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「今日のハル」
と、LINEが来るのを心待ちにしていたの

あのブチャイクな仔猫が
本当に美しい、凛とした猫になっていった…

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幸せな日々だったね

本当に…















天国のハルちゃんへ

そちらは晴れていますか
たまには雨も降りますか
そうしたら虹が出て
みんなでそこから、遺してきた家族を眺めることが出来ますか

旅立った我が家の仔たちもいますか
みんな可愛がってくれていますか

お腹は空いていませんか
走って遊ぶことは出来ますか
毎日、幸せですか

少し前に逝ったお母さんには
会えましたか

そちらにいる仔たちを見送った家族は
とってもとっても貴女たちに会いたいと願っています
別れまでに訪れる沢山の選択の結果を
気付けなかった後悔を

何度も思い出しては悩み
そちらで大雨となる涙を流します

「猫型に空いてしまった心の穴は
猫でしか埋めることが出来ない」

誰かが言っていました

ハルちゃんのママやお姉ちゃんも
きっと、ハルちゃん型に空いた心の穴の傷みに
たくさん泣いて苦しんだ事でしょう

それなのに

私なんかよりもっと沢山泣いた
一番辛かったはずの貴女のママは

「ハルに出会えて良かった
日菜子さんは今も、ハルのもう1人のお母さんです」

と、言ってくれた

その一言で、ハルちゃん
貴女がどれほど家族に愛されたのか
どれほど幸せだったのかを知った

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そして、貴女は

最期にとっても素敵な奇跡を起こす




「ハルが写真集の表紙になる」




貴女が遠いところへ旅立って少しして
ママさんからそう連絡を受けたの

その時の感動は
貴女に家族が見つかった時と同じくらいの衝撃

私は歓喜に叫んで飛び跳ねた

そして今日

ハルちゃん

貴女が生きた証が全国に並ぶんだよ



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「不要な命」と宣告され
人間の身勝手で
冷たい檻の中で短い命を終えるはずだったハルちゃん…

貴女は、とっても大きなお役目を猫神様に命じられ
この世に生まれてきたんだね

偶然のような、必然のような
導かれるように辿った運命の果てに

本当の家族に出会い
愛し、愛されて
みんなの人気者になり
ちょっぴり早いお別れをし

再び、帰ってきたんだね

悩んだ事も、これで良かったのかと
迷って、泣いた日もあった
それでも、今ならやはり
あの日、貴女を救いたいと走った事
間違いではなかったと思える



ハルちゃん

貴女が生きた証は永遠に残る

愛する家族への
最高の恩返しだね

次にお迎えする仔も
絶対に貴女のように幸せと笑顔をくれる
宝物のような、運命の仔になるはず

ハルちゃん

いつか
家族の心に空いた猫型の穴が
貴女の弟妹になる仔で埋められる日が来たら

きっと貴女は

「あたしと同じ、行き場のない仔をまた幸せにしてくれてありがとう
やっぱりあたしの自慢の家族だわ」

って、笑うんでしょう

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その日まで
ハルちゃんの大好きな家族を
そちらから
ちょっとクールなステキな笑顔で
見守っていてね

貴女は最高のミラクルガールだったよ

生まれてきてくれて、ありがとう

ハルちゃん





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今回の記事作成にあたり
写真の使用や、当時の事、ハルちゃんへの想いを再び綴らせて頂くことを快諾して下さったハルちゃんママさん、心から感謝いたします

いつか、殺処分がなくなる日が来ますように…











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