フィルムアート社発行の『映画の言葉を聞く』は早稲田大学「マスターズ・オブ・シネマ」の講義録です。

アメリカのケーブルテレビで、監督や俳優などの映画人をゲストに招いて対談するアクターズスタジオインタビューをモデルにしたそうです。

 

ちなみにアクターズスタジオは、アメリカの映画の専門学校ですよ!

この本には、2016~2017年に行われた講義のゲストの35人のお話が収められています。

 

 

ゲストの中には、今まで私が知らなかった監督や作品があるんですが、それでもこの本が面白い!と感じさせるのはゲストには、それぞれ考え続けて導き出したであろう個人の哲学を持っていると感じさせるからなんです星

この本を読んでいると、その人の哲学が関わった仕事にどう反映しているのか?という事が気になってその作品を見てみたい!そんな気持ちにたびたびなりました。

 

『映画の言葉を聞く』をよんでみて、とくに印象に残ったお話を上げてみたいと思います。

 

オリジナルにこだわらない

鈴木敏夫:よく作りての人たちは自分の個性とかオリジナルにこだわる事が多いけれど、現代はとにかく「引用の時代」であって、それを僕自身も実は楽しんでいます。

 

大林監督:何もない所から発想しろって言ってもムリだよね。そのためにはたくさんのものを見るんです。そうすると憧れてマネしたいものがたくさんでてくる。

「こういう映画みたな、あれは良かったな」と思っても、それをただマネすることはしない。

 

何するときのきっかけとして、ほかの作品に共感してリスペクトするという事があるとおもいます。そうすると、どうしても似たものになってしまうこともあるのではないでしょうか?

どこからが盗作なのその境界があるのかないのか分かりませんが、そのもとになるものに自分のアイデアをプラスして肉付けしていけばそれはもうオリジナルで良いんじゃないのかな・・とこれを読んで感じました。

 

映画にとって観客とは?

古舘寛治:表現というのは人に観られてなんぼというか、観られたことで初めて完結するものだと思っています。

 

細田守:公開した瞬間に、映画は監督やスタッフや俳優のものではなく、観客のものじゃないですか。

 

是枝祐和:僕は自分の作りたいものが作れれば誰も見なくてもいいとは全く考えていません。映画はお金を払ってみてもらうことで初めて成立するものなので、観客はすごく大事な存在です。

 

細田監督は、映画を私的に扱うというのが、狭い、つまらない感じがすると言ってます。

絵画とか音楽にはないメッセージ性が映画にはあって、それを受けっとった人の価値観を変えるほどの力が映画にはあるのに勿体ないという事なのかなと思いました。

 

 

映画のリアリティとは?

片渕須直:実際に自分が目にしたものとは違うものとしてとらえるからこそそれが良いものとして見える。細部や魅力がよく見えてくるということです。

 

古館寛治:リアリズムはとても大事な言葉だと思うんです。フィクションの世界の中で、いかにその人間が本当に生きているように見えるかということが僕にとっては重要なんです。

 

是枝祐和:理想としては、例えば「海よりもまだ深く」なら、映画が終わって後もあの家であの母親が暮らしているんだろうなって見た人が思ってくれること。

 

是枝監督の作品は何作か見ましたが、たしかに作品を見終わった後に余韻が残ります。それはフィクションってわかっているんだけど、その世界はパラレルで実在するような感じ。受け取った側はバトンを渡されて、その先は自分で物語を綴っていくような、そんな想像力を掻き立てる余韻があります。

 

 

分かり易い映画が良い映画か?

 

森達也:分かり易くするということは、四捨五入で端数を切り上げたり切り捨てたりしちゃう操作です。そうするといろんなディティールや、グレーな領域が消えちゃう。僕はその端数や間こそが大事だと思う。見ている側がそこでいろいろ考えればいい。

 

森達也は私の好きな監督で、私たちがいかに情報や周りに影響をうけて右左と極端に揺れ動いているのかといことを淡々と冷静に語りかけてくれる人です。物事や人は白と黒の二面があり、それはとらえる人の主観なんだよと言います。だから映像に客観はなくてすべて主観なんだよと・・・

そうすると、想像力を掻き立てることが出来る映画というのは、洗脳としてもつかえちゃうんですよね。

是枝監督は、見た人が生きるのが嫌になるような作品は作りたくないと言っています。それだけ、映画は作りようによっては、見る側に意図を植え付けるだけの力があるということなんですよね。

 

最後に

 

映画は監督を中心としたたくさんの人とのかかわりの中でカタチになり、私たちの前に映し出されます。

そして、そのカタチは私たちの個人の観念とか知識によっても変化していく。

その感想が一つじゃないから、映画は見るのは楽しいし、見る価値があるんだと思います。

この本は、映画にかかわる人たちの専門的な話じゃなくて教養を身に着けた正しい大人の生き方を教えてくれる本だと思いました。