すべての表現形態が規制対象である、
と以前書きました。

条例の規制対象は全ての表現媒体です



不健全指定の条項である8条を、
もう少し丁寧に見ていきたいと思います。




「第8条 知事は、次に掲げるものを青少年の健全な育成を阻害するものとして指定することができる。


一 販売され、若しくは頒布され、又は閲覧若しくは観覧に供されている図書類又は映画等で、その内容が、青少年に対し、著しく性的感情を刺激し、甚だしく残虐性を助長し、又は著しく自殺若しくは犯罪を誘発するものとして、東京都規則で定める基準に該当し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあると認められるもの


二 販売され、若しくは頒布され、又は閲覧若しくは観覧に供されている図書類又は映画等で、その内容が、第7条第2号に該当するもののうち、強姦等の著しく社会規範に反する性交又は性交類似行為を、著しく不当に賛美し又は誇張するように、描写し又は表現することにより、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を著しく妨げるものとして、東京都規則で定める基準に該当し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあると認められるもの


(三号四号はモデルガンや刃物に関する規定なので省略)」



簡単に言えば、
「図書類」であって
その「内容」が「第7条第2号に該当するもの」のうち、
「施行規則が定めるもの」が不健全指定の対象となる。



というものです。



この条文の解釈上、
一番問題となるのは、
「7条2号の文言の取扱い」です。



というのも、
7条2号はその中に「マンガアニメ」という言葉が入っているためです。


「二漫画、アニメーションその他の画像(実写を除く。)で、刑罰法規に触れる性交若しくは性交類似
行為又は婚姻を禁止されている近親者間における性交若しくは性交類似行為を、不当に賛美し又は誇
張するように、描写し又は表現することにより、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を妨げ、
青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの」



8条の「内容が7条2号に該当する」という文言において、
「2号」が「マンガアニメ」という媒体まで含むか、
という点がポイントです。


含むのであれば、
8条の不健全指定のうち、
強姦等の表現(法定強姦や青少年の性行為を含む)や、
近親相姦表現(犯罪ではない)は、
「マンガアニメ」のみ規制の対象となる、
と解釈することになります。



一方、
含まないのであれば、
8条の不健全指定は、
上記のような表現を含む、
すべての図書類や映画等が規制の対象となります。



結論からいうと、
私は8条をもって不健全指定できる媒体は、
マンガやアニメに限定されず、
小説や実写を含むと解釈するのが適当だと思います。



なぜでしょうか。



まず第一に、
「その内容が」という8条の文言です。


「図書類又は映画等であって、その内容が7条2号に該当する」というのが条例の文言です。



「マンガ、アニメ」というのは、
表現の媒体であって、
表現の内容ではありません。


したがって、
8条が引用しているのは、
7条2号の文言うち、
「内容」のみである、
と解釈するのが自然ではないでしょうか。




もう一つ、
他の条文との兼ね合いがあります。


7条及び9条の2は、
自主規制の条文です。


当該条文においては、
規制対象が「マンガアニメ」にはっきりと限定されています。



特に、
9条の2に注目します。


「一第8条第1項第1号の東京都規則で定める基準青少年に対し、性的感情を刺激し、残虐性を助長
し、又は自殺若しくは犯罪を誘発し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの


二第8条第1項第2号の東京都規則で定める基準漫画、アニメーションその他の画像(実写を除く。)
で、刑罰法規に触れる性交若しくは性交類似行為又は婚姻を禁止されている近親者間における性交若
しくは性交類似行為を、不当に賛美し又は誇張するように、描写し又は表現することにより、青少年
の性に関する健全な判断能力の形成を妨げ、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの」


9条の2は、
表示図書の項目です。


つまり、
出版社に対して「18禁表示」を義務付けるものです。



ここでははっきりと、
「マンガアニメ」に限定されています。



上記の8条の不健全指定の条文と比べてみてください。



このことからも、
8条の不健全指定の対象は、
マンガやアニメに限定されず、
小説や実写を含むことが明らかです。



ただし、
実際の運用では文字のみの小説や実写は審議されていないようです。



また、

7条は9条の2と条文構成が良く似ているため、

その点を重視すると、

はっきり書いていなくても、

9条の2は「小説や実写を含まない」と解釈することも可能です。


※私は、

  この点は条文の構成よりも、

  自主規制と不健全指定という規制対象の違いを重視する立場です。


  また、

  もしマンガアニメに規制対象を限定したいのであれば、

  「その内容が」なんて文言をいれずに、

  ただ「7条2号に該当する~」とすれば良かったと考えます。

  そのため安易に7条と同じ構成だから対象外とは言えないと思います。


  しかし、小説が不健全指定された場合、

  出版社が上記のとおり抗弁する余地はあると思っています。




閑話休題。




しかしながら、

含まれるか否かは正直どちらでもいいのです。


含まれる可能性がある

ということが重要です。



私がこの都条例改正で一番大きな問題だと考えているのは、


①規制対象が広すぎる不明確な条文


②公権力の恣意的な運用


です。



そのためにも、
運用で条例が良いか悪いかを決めるのではなく、
運用に沿った条例の文言を制定するべきだと考えています。



つまり、


実際にどのような運用が行われているか、


ではなく、


そのような運用のみが許されるように、
条文を作るべき、


というのが私の立場です。
私の立場



もう少し考えてみて下さい。


刑法では次の規定があります。


(殺人)
第199条 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。


と決められています。


これを都条例と同じように改正してみましょう。


都条例は非常に大きく規制範囲を広げておいて、
限定して運用しています。


これに倣って、


(殺害)
第199条 生物を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。


と改正したらどうでしょうか。



改正した人たちは、

「人間を殺した場合しか適用しないから大丈夫」と言います。


でも、
法律上は「生物」を殺した場合、
第199条に該当するのです。



具体的に考えてみると、
法律の文言には「生物」と書かれています。

「生物」には、
人間はもちろん入りますが、
その他にも犬や魚、虫だって入ります。



つまり、
夏に蚊を退治したら、
刑法第199条に該当するのです。


法律は条文がすべてです。


蚊を殺した人間まで、
死刑にできるような法律があることは怖くないですか?


都条例の改正案も、
同じことが言えるのです。




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