すると
先生がわたしに
「カメラを持っているなら
撮ってあげて」
と言い
わたしは
ハッとした
わたしは
誰もが出産を
写真に残したい
と思うわけではない
と思っていたし
友だちにも娘さんにも
「写真を撮っていいか」
は聞いていなかったし
聞こうとも思わなかったが
先生が
「撮ってあげて」
と言うのは
皆んなの共通の思いだ
と思い
またわたしの願いが
向こうからやってきて
「こんなことがあるのか…」
と思った
そして
カーテンの
こちら側から
分娩台の娘さんの
膝下辺りを撮っていたら
先生が
「中に入って
娘さんの頭の辺りから
撮ってあげて」
と言い
わたしは
流されるままに
全てが
一瞬で吹き飛ばされる
圧倒的で
剥き出しの
エネルギーの
原爆や
台風の
中心にある
何にも
穢されない
静寂
凪へと
さらに
進み
無言で
発狂する
喜びに震えながら
写真を撮り始めた