―いつか俺たちが死んだら、水になるね。
骨ごと溶けるような、
私の体とあのひとの体のあいだに
皮膚なんて存在しないみたいな
烈しくすばらしいセックスのあと、
あのひとはよくそう言った。
―こうやって抱きあったまま、水になって流れていく。
―川みたいに?
―そう。川みたいに。
―抱きあったまま?
―そう。絶対に離れない。
手も足もからめたまま、川みたいに。
それは、とても単純なことに思えた。
とても単純でとても正しい、
この上なく安心なことに思えた。
いつか私たちが死んだらー。
グラスの中のジン・トニックは、
ひかえめな明かりの中で、
夜の川のようにみえる。
森の奥を流れる清冽な川。
いつか私たちが死んだら―。