ホテルのベッドのようにパリッと整えられた真っ白いシーツに腰を落とす。
ベッドサイドに置いてあった台本を手に取ると、条件反射で煙草に火をつける。
肺いっぱいに吸い込むと、散らばっていた意識がかき集められたように集中する。文字の羅列だった文章が、鮮やかな情景をもって意識の中に潜り込む。匂い、息遣い、感情。。。
物語の中に、意識が潜り込みかけたとき、ぱっと視界が遮られ、温かい何かが唇に触れた。
「・・・まお?」
我に返ると、まおの腕に閉じ込められ、唇が塞がれていた。
「大ちゃん、また煙草吸ってる。」
「…悪い。」
禁煙する。まずは、二人でいるときは、吸わない。
約束をしたというのに、長年の癖は無意識の行動でなかなか止めることができない。
「言ったよね?少しでも、身体いたわってほしい。って。」
「そうだな。」
自身を大切にしていない自覚はなかったが、自分の身体は自分のものだと思っていた。どう扱おうと自己責任だと。愛する大切な人(まお)を得て初めて、他人のために自分を大切にしたいと思うようになった。
「大ちゃん、僕のこと、好き?」
膝に乗り上げてきて、至近距離でささやかれる。
長いまつ毛がパシパシと頬をくすぐり、首筋にかかる吐息にぞくりとする。
「何をいまさら、、言わせようとするな。」
最初のころは、いつも俺が言葉にしまくって、照れるまおの反応を楽しんでいたというのに、今ではすっかり形勢逆転してしまった。
「好き、だよね。」
触れ合うか触れ合わないかの距離で、まおの唇が綺麗に弧を描く。
「好き」という単語をそのまま、俺の唇に吹き込むように。
ここまで魅惑的に誘われて、触れずにいれる男なんているだろうか。
すぐそこにあるまおの唇に触れようとすると、すっと腰を引いてしまう。
「タバコとキス、どっちがいい?」
俺の指から、まだ一口しか吸っていない煙草をまおが奪い、高々と掲げる。
「そりゃ、お前。聞くまでもないだろ。」
「どうだか。誰かさんは忘れっぽいから。」
「それはっ!忘れてるんじゃなくて、無意識でっ。。。」
「ふ~ん。そうなんだあ。無意識で、僕より煙草を選んでるんだね。」
「…意地悪。」
言葉とは裏腹に、まおの瞳はキラキラと輝いていて、俺をからかうネタを見つけたと言わんばかりだ。
「ね。」
「もう、黙れ。」
まおから煙草を取り上げ、唇を塞ぐ。
触れあうまでは、俺が一方的に追いかけている感じがしていたが。
一旦触れてしまうと、与えられることを知っているまおの吐息が一気に甘く漏れる。
角度を変えるたびに、「ふっ。」と鼻から抜ける息と、「くちゅっ。」と響く水音が、決して俺の一方通行でないことを教えてくれる。
ああ。そうだった。こんなにも満たされる存在があるのに。
触れるたびに、どこまでも深いところまで安堵のようなものが広がり、温かい空間に包まれているのを感じる。
「愛してるよ。まお。」
「ふふっ。・・・ありがと。」
こつんと額を合わせると、まおが綺麗にほほ笑む。
「お前さあ。その手管どこで覚えてくんの?」
最近の俺は、まおの手のひらで転がさている気がする。
「そりゃ、毎日大ちゃんと一緒にいたら、自然と身につくよ。」
「俺、お前みたいに翻弄するテクないぞ?」
「ふふっ。大ちゃんのフェロモンで育ってるんだよ。」
「それは、喜んでいい案件なのか??」
栄養素は俺としても、咲く花は全然別物のような。
「俺に憧れて。」とじーっと観察して、成長しようとしていたけれど、やはりまおにはまおの魅力があって、俺には真似できそうにない。
「ところでさ。さっきのセリフ、、、どこかで聞いたことあるような??」
「「ベッドとソファ、どっちがいい?」」
目を見合わせると、まおの目がキラリといたずらっぽく輝く。
同時にセリフを言った瞬間、大爆笑しながら、
「ベッドがいい!!」
と、まおがベッドにダイブしてきて、押し倒された。
「成長したなあ。お前。」
なされるがままに、身体中にキスの雨を受けながら、二人して笑い転げるのだった。
そんな、いつものある日。
-----------------------------------------------------------------------------
魔導阻師にハマってから、BL熱が再燃したのか??
よくわかりませんが、急に大まおさんが降ってきたのです。
しかも、関係性が随分と変わっていて、びっくり!
いや、でも根本的なとこは変わってないよなあ。まおに甘く翻弄される大ちゃん。
ただ、まおがグイグイ積極的になった?←これは、魏インの影響かも。
時系列は無視です(笑)
大ちゃん結婚されてるしね。
大まおファンさんに楽しんでいただけたら、と思います^ー^