「君も一緒にこないか?一人では寂しすぎる。」
この世ならぬもの。
ぼくには、まだ未練があった。
「この世」に縛られるべきお母様という存在が。
母は僕を見ていない。
僕を通して「父」を見て、信用できないと言う。
僕とマーゴットの結婚を通して、自分の幸せを見ている。
クリフォードに叔父。
結局は、女として自分を愛する男にしか興味がないのだ。
ぼくが、こどもとして、こんなに愛しているというのに・・・。
叔父が死んだ。
「取り返しのつかないこと」
突き飛ばしたときの手の感触がまざまざと残っている。
「人殺し」
確かに、おぞましい衝動に違いない。
でも、ぼくを追い詰めたのは・・・。
僕を責めた母。
汚らわしい欲から母を守ろうとしただけなのに。
自分の安定した未来が閉ざされたと絶望に叫んでいた。
ぼくの、未来は?
ぼくの未来はどうでもいいの?
それとも、存在さえ忘れていた?
罪を犯した僕。
守るべきものもなければ、守ってくれる人もいない。
メリーベル・・・メリーベルに一目、会いたい。
ロゼッティに似た少女。
ぼくがまだ幸せだったころの象徴。
唯一「僕」を見てくれるエドガーの妹。
美しく澄んだ瞳に、哀しみをたたえていた。
繊細で儚い彫刻のような兄弟。
二人は同じ世界に住んでいてー・・・
言葉を交わすことも触れることもできるのに、僕とは違う世界の人間みたいだった。
「メリーベルはもういないよ。」
真っ暗な夜風が吹き込む。
ぼくを誘う声がする。
ぼくを迎えるためにぽっかりと開いた空間にエドガーが立っていた。
かげろうのようにぼうっと白く光っている。
現実と、違う世界を繋ぐー・・・。
この窓を超えれば、エドガーたちのいる世界に行ける。
エドガーが手を差しのべる。
碧い海のように深く、硝子玉のように澄んだ瞳。
孤独と闇がエドガーの全身から揺らぎ立っている。
「行くよ。未練はない。」
救いを求めてその手を取る。
いや、本当は、救いたかったのかもしれない。
ぼくの「孤独」「罪」「哀しみ」よりも、ずっとずっと深い気がしたから。
最初は理解してくれる、という安らぎのようなものだったかもしれない。
今は、彼の世界に行き、共有したいと思った。
「独りになりたくない」
「独りにしてはいけない」
彼の瞳に吸い込まれるように、足がふらふらと窓枠にかかる。
彼の腕が僕の腰を抱き寄せる。
冷たい手に全身の血が逆流する。
現実を捨て、彼を選んだ。
未知の世界への高揚感が全身を駆け巡る。
彼の指先が、僕の首筋をたどる。
髪の毛をかき上げ、冷たい風がうなじを撫でる。
エドガーのくちびるが、ゆっくりと首筋に押し当てられるー・・・。
身体の中は燃えるように熱く、ひんやりとした感触が心地よい。
冷たいくちびる。
バンパネラ。
チクリ。
微かな痛みが首筋を襲う。
冷たいくちびるが、火傷しそうに熱い。
ぶわっと一気に身体の隅々まで、何かが流れ込んでくる。
彼の抱えていた孤独や哀しみ。
そして・・・愛。
エドガーの記憶がぼくに流れ込んできて。
メリーベルの笑顔とともにー・・・ぷつんと途絶えた。
目覚めると、エドガーの瞳がすぐそばにあった。
ぼくを選んで、僕を見つめてくれる瞳が。
「違う世界」が「同じ世界」になっている。
「僕はもう独りじゃない。」
心に何かが満たされてゆく。
決して幸福と呼べるものではないけれど、心のすき間を埋めるような何か。
「君を独りにはしない。」
「君と生きて行くよ。永遠にー・・・。」
エドガーの瞳を見つめ、誓う。
瞳の奥の「孤独」も「闇」も消え去りはしていないけれど。
ぼくを慈しむような優しさがあった。
二人でー・・・この闇を抱えていこう。
エドガーのてのひらが、僕の手のひらをしっかりと握る。
ああ。君のみている世界だね。
愚かで、汚くて、虚像に満ちた現実。
でも、愛おしくて仕方がない。
愛しても、愛しても、手に入らない世界だから。
「終わりがあるから美しい。過行く時を慈しむ。」
ぼくの時間も止まった。
でも、怖くはないよ?
君と同じ時間を、慈しもうー・・・・。
エドガー?
バンパネラは愛がなくては、生きていけないんだろう?
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恐れ多くも、ポーの一族を描いてしまいましたWWW
久しぶりにみりれいの「ポーの一族」を見ていて。
ゴンドラでみりお様に首筋を自ら差し出すれいちゃんのうなじっ!
みりお様の妖しいキスからの~れいちゃんが微かに眉をひそめることろっ!
おおーーーーっ!今、吸われた(エナジーを吹き込まれた?)んだねっ!!!
きっと、火傷しそうに熱くて、ぞわっとぶわっと??流れ込んできたんだねっ!
もう何十回と見ているのに、この「れいちゃんの眉」に反応してしまいましたWW
これ、アランがみりお様なら超絶色っぽい表情をしてくださっただろう・・・。
二人のキャラも実力もなーんにも知らなかった当初は、逆だと思っていましたW
ビジュアル的に、エドガーがれいちゃんで、アランがみりお様。
「ポーの一族」の繊細な世界観がほんと大好き!
続き・・・ないかなー・・・?
シーラは退団しちゃうけど、エドガーもアランもメリーベルもいるっ!
舞台装置から音楽から衣装から全てが大好きだったので、もう一度生で観たいーっ!!