「ガオっ、ガオっ・・・。」
俺の名前をホワンの唇が紡ぐ。役名でなく。
知らない角度があるなんて許せないとばかりに、何度も、何度も角度を変えて唇を合わせる。
撮影ではキスはしない、なんて言っていたことが嘘のようだ。
本気になってしまうのが怖かったから。
ホワンの指先が俺の髪をかきむしるようにまさぐる。
まるで、押さえつけられていた感情が一気に爆発したようだ。
「こっちっ・・・。」
ホワンが俺の手首をぐいっと引っ張る。
何も言わずに寝室までズンズンと歩いてゆく。
俺がイーチェンにしたような強引さで。
ドサリ。という音とともにベッドが背中を受け止める。
至近距離からまっすぐに見つめてくるホワンの瞳は真剣そのもので。
強さと危うさと色香を含んで揺れている。
「怖い・・・?」
乱れる息は緊張のせいだろうか?それとも欲情?
ホワンのせわしなく動く胸郭に急に愛おしさがこみあげてくる。
可愛らしくじゃれついてきた笑顔の向こうで、こんな情熱を隠しもっていたのか。
ホワンへの友情が恋のような甘さを含んでいると自覚したからと言っても、ホワンが同性であることに変わりはなく。
情熱をたっぷり含んだキスを交わしたからと言って、肉体欲に直結するわけでもない。
ただ、ゆらゆらと揺れるホワンの瞳に吸い込まれそうで。
切なげに上下する胸の内に取り込まれてみたくて。
俺に触れてくる指先の震えを止めてやりたくて。
ただ、この感情をどう言葉にすればいいのかわからずに、ゆっくりと首を横に振り、笑みを作る。
「良かった・・・。」
ふわり。と花が咲いたように笑う。
トサリ。と安心したようにホワンが俺の上に落ちてくる。
ホワンの体重を受け止めながら、彼が抱えてきた想いを感じた。
「ガオ。好きだよ。」
ささやきが首筋をくすぐる。
吐息が耳元をかすめる。
皮膚を食むように何度も何度も唇が押し付けられる。
肩のラインをすうっと撫でて、胸板を唇が滑る。