色とりどりの花束が机を埋め尽くしている。

いつもより華やかなテーブルのはずなのに、もうホワンと会う口実がなくなったという寂しさがひしひしを押し寄せてくる。

 

「・・・痛っ・・・。」

 

バラの棘が指先を刺す。

ホワンがいないという現実を、流れる血が思い出させる。

 

「ホワン・・・。」

 

狂おしいほどに求めたお前は、もうこの腕の中に還ってくるくることはないのか。

 

「疲れた・・・。」

 

全身からどっと疲れが噴出し、ベッドへ深く沈む。

あまりにも幸せすぎた時間がそうさせるのか。

ホワンの想いなのか、俺の想いなのか。

考えるのが怖くて、ずっと避けてきた。

 

終わり。がくるなんて思いたくなかたから。

 

 

 

「・・・ん?今、何時だ?」

 

いつの間にか眠っていてしまったらしい。

花瓶に生けられた花が生き生きと上を向いている。

つけっぱなしだったテレビが、ローカルなCMを流している。

部屋の時計が今日の終わりを告げようとしている。

・・・俺とホワンの幸せだった日々を。

 

テーブルには「待ってたよ。」とばかりにホワンの写真集が置かれている。

 

「ふふっ。普通は男相手に写真集は贈らないよな。」

 

俺が喜ぶとでも思ったのだろうか。

自信家なのか、謙虚なのか。

大切にしてよ!と言いながら、震えていたホワンを思い出しながら、パラパラとページをめくってゆく。

 

「本当に、いろんな表情をするよな。」

 

純情でかわいらしいかと思えば、気高く美しい。

 

・・・そして、妖艶に、誘う・・・。

 

あるページで俺の視線が釘付けになる。

 

半裸で微笑むホワン。

艶やかに潤む瞳。

薄く開いて誘うくちびる。

 

真っ白な紙にただ一言。

 

「ガオへ。」とだけ書かれたメモ。

 

なぜだか、アイツが一人で泣いている気がした。