「大ちゃんってさあ。意外と垂れ目、だよねえ?」

 

隣で差し入れのパンケーキをつっついていた馬場りょがぼそっとつぶやく。

先ほどから何をじーっと凝視しているのかと思えば、だ。

そんなに大ちゃんに興味があるとは思わなかった。

 

「何?そんなに大ちゃんのこと見てたの?お前。」

「・・・や。ってか。ほら。」

 

頬杖ついたままホークで大ちゃんを指す仕草に「行儀悪いぞ!」と、他のやつなら突っ込みたくなる。

なるはずなのに、馬場りょの憂いを秘めたような眼差しで視線を促されると、むしろ「かっこいい仕草」だとか思えてしまうから不思議だ。

 

おっと、話題が逸れてしまった。

 

とにかく憂いを秘めた馬場りょの視線、にもしかして大ちゃんへの恋心ゆえに??などとドキドキしていたら、大ちゃんの視線の先、に気が付いた。

 

「・・・まお?」

「うん。まお君を見詰めてる大ちゃんってさあ。目尻めっちゃ下がってるよね。」

 

もしかして、馬場りょはまおを想う大ちゃんへ片思いしてるのか??

 

「ああ。彫刻のような完璧な顔、って言われてる割に、確かに今の顔は・・・。」

「でしょ?なーんかイメージ違うなあ。と思って。ってか、初対面に比べてどんどん顔つきも柔らかくなってね?」

「うーん・・・。そう言われれば、そうかも。」

「恋のチカラってやつだよなあ。」

 

今度は二人をぼーっと眺めながらフォークを銜えて、ぷらぷらさせて遊んでいる。

ぽわぽわとした馬場りょの仕草が可愛らしくて、可愛らしいと感じた自分に動揺する。

 

「・・・お前・・・。辛くないのか?」

「んー・・・?なんで?」

「なんでってお前、大ちゃんのことが好きなんだろ?」

「・・・はあっ!?」

 

きょとーん。としていた瞳が、意味を理解した途端に、まんまるに見開かれる。

 

「何が?どーして?どっから、そーなる?」

「いや、大ちゃんのこと眺めてぼーっとしてるから、てっきり恋煩いかと・・・。」

 

馬場りょが心を痛めているのかと思えば、俺の心も心なしかチクチクしてしまったことは内緒だ。

 

「んなわけ、ないでしょ?単に人間観察だよ。

まお君もたいがいわかりやすいけど、大ちゃんもわかりやすいなー。と思って。」

 

まおが何か段取りを間違えたらしくあたふたとしているのを見て、大ちゃんが微笑ましいと言わんばかりに目尻を更に下げる。

あまり興味がなかったから今までそこまで注意してみてなかったけど、まおの仕草に逐一

「かっわいいなあ。」とつぶやいては目尻を下げている。

 

「ね?わかりやすいでしょ?ツンデレだよねえ。大ちゃんってば。」

 

確かに。

 

「まお君と恋人役してたら、ほんとに恋人になっちゃたりして?」

なーんて誰かがからかおうものなら、

「そんなわけないだろ?仕事だよ、仕事。プロだからな。」

なーんてかっこつけてるくせに、あの目尻の下がり具合をみれば、まお君に恋してるのなんて、一目瞭然だ。


撮影真っただ中のまおには、大ちゃんが自分を見詰めてデレまくっていることなんて知る由もなく。

「僕は大好きなんだけどね。大ちゃんはそうでもないみたい。」

なーんて、ちょっぴり寂しい目をしてまつ毛を伏せるんだ。

 

「まお君も苦労するよね。」

 

馬場りょが皿に残ったパンケーキを男らしくぐさっ!と指してまとめて頬張る。

 

「黙ってればカッコイイ。ってよく言うけどさあ。大ちゃんの場合はまお君がいなけりゃカッコイイ。だよねえ。」

「んー・・・。でも、俺はデレてる大ちゃんのほうが好きかも。なんか親近感湧くっていうか。」

「あ。それ俺も同感!大ちゃんも恋すると彫刻じゃなくなるってゆーかっ!」

 

・・・先ほどから褒めているのかけなしているのか。

 

「ちょーっ!!!大ちゃん垂れ目注意報出てるよっ!!!」

 

パンケーキをごっくんと飲み込んだかと思うと、大ちゃんのところにダッシュして、両目の横を手のひらでぐいっと持ち上げている。

 

「あははははっ!ウルトラマンみたいっ!!」

 

まおの鑑賞に浸っていた大ちゃんは、急に邪魔されてすこぶる機嫌が悪い。

対照的に馬場りょはテンションマックスではしゃぎまくっている。

 

「なんだよ。垂れ目注意報って。俺はそんなに垂れてない。」

「あははっ。自覚ないんだ!じゃあ、これから俺が毎回予報だしてあげるよ。」

「何の話だ?」

 

ぶっすう。とふてくされる大ちゃんに無邪気な馬場りょ。

 

まあ、この二人で恋に落ちても絶対に合わないよな・・・。

 

 

そして、撮影の合間に横目でちらちら気にしながら。

 

「やっぱり大ちゃんは馬場りょと一緒にいるほうが楽しいんだ。」

 

なーんて言いたげな視線を向けているまお。

 

 

・・・確かに、苦労するよな。

頑張れ、まお。

 

んでもって、頑張れ。大ちゃん。

 

馬場りょという仲間を持ってしまったばっかりにお互い苦労するよな。

 

 

でも、そんなみんなを眺めているのが楽しい。

 

 

俺の趣味の欄に「人間観察」が付け加わったのだった。

 

 

 

 

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せっかくアメンバー申請していただいたので。

大まおのお話を一本書いてみました。

 

・・・と言っても、タッキー目線のお話しですが。

 

タクミクン時代に戻ってほんわかしていただけたら嬉しいです^-^