「大ちゃんってさあ、ドSだよね。」
「・・・そうかな?」
自分では意識したことがなかったけど、友人からの指摘で気が付くこともある。
そう、アイツが現れてから。
*
「ギイはホントにかっこよくて、リアルにドキドキしちゃいます。」
まおが、パタパタと顔をあおぎながら、インタビューに答える。
テニミュで散々共演してるし、着替えシーンだって飽きるほど見てるし、なんなら同じ部屋で眠ったことだってある。
学生の合宿のノリで大勢でわいわいと騒ぐのは、年齢関係なしに楽しいものだ。
恋人役を演じるなんて思ってなかったから、「そういう対象」として意識したこともなかった。
・・・急に恋人です。と言われても、映画の中の設定と現実がリンクするわけではない。
恋人役の共演者といちいち恋に落ちていたら、何股かけたらいいのやら。
昼ドラ並みのどろどろワールド展開。となってしまう。
と、言いながらも、役を引きずるのもゼロではなくて、やっぱり恋人役を演じている間は、まおを「そういう意味で」可愛いなあ。と思ったりもする。
仕事として言っているだろうな。と思いながらもマジ照れしているまおが可愛い。
と、思っていたけど。
仕事を離れてしまえば、あまりにもあっさりしている。
おいっ!?リアルにドキドキするんじゃなかったのかっ!!!
って、ツッコミを入れたくなるぐらい、あっさりした笑顔で手をひらひらと振る。
「お前~~!ムカツクわあ!」
「だって、俺、夜寝ないともたないんだもん。じゃあね。お疲れ様。おやすみっ!」
去ってゆく後ろ姿を恨めしく見送っていると、まおが振り返ってとびっきりの笑顔をよこしてくる。
「あ。忘れ物。」
なんだ?と、問う間もなく
「愛してるよ。ギイ。」
と、投げキッスをもらった。
撃沈。
あの愛らしさは反則だ。
男だとか、女だとか、年下だとか、年下だとか。
全てのジャンルを超えて、ドストライクに心臓を撃ち抜かれるような。
でも、あれも芝居のうちなんだもんなあ。
大物だよ。お前は。
・・・そう。
芝居の上で俺に恋してくれているだと思っていた。
「今度大ちゃんの家に遊びに行っていいかな。」
「何をいまさら。気を使うような相手でもないだろ?」
例えば、ゆんと何気ない会話をしている時。
「大ちゃん。ここのところどういうふうに解釈したらいいと思う?」
「そうだなあ。お前の考えはどうなんだ?」
特別に親しいという意識はないのだけど、テニミュメンバーと個別に話している時。
「今度の休み暇?気になる映画があるんだけど、一緒に行かないか?」
「んー・・・。今のところスケジュール空いてるけど。」
特定の誰か、というわけでもないけど、遊びのお誘いに返事している時。
触れ違いざまに挨拶代わりに、誰かにボティータッチした時。
気が付いてしまった。
あっさりしている。と思っていたまおが、実はそっぽを向いてふてくされていることを。
かまってほしいなら、そう言えばいいのに。
「おーっ!今度の休みにまおも来るか?映画。」
「・・・遠慮しとく。だって、先約あるんでしょ?」
「知らないやつでもあるまいし、大勢のほうが楽しいじゃん。」
「・・・いい。その日、忙しいから。」
さっき、先約あるから遠慮するって言ったじゃん。
かまってオーラを発しているくせに、構いに行くと、そっぽを向いて興味のないふりをする。
仕事が絡むとあんなに好き好きオーラ全開のくせになあ。
ギャップが本気を匂わせる。
「そっかあ。残念。映画だけでさよならも寂しいし、その後飲みにでも行くか?」
「いいねえ!どこにする?」
興味ないふり、をしながら、こっちをバリバリに意識しているのがメイク台にうつるまおの表情でわかる。
「あっ!お前、あそこのキーがよくでるようになったよなあ!」
「えっ!ほんとっ!?嬉しいなあ。気が付いてくれたんだ。」
他のメンバーを褒めるたびに、振り向きもしないくせに、まおの頬が地味に頬が膨らむ。
かわいい。面白い。
気が付いてしまってからというもの、まおの反応を見たいがために、敢えて他のヤツにちょっかいをかけていた。
気が付かぬは本人ばかり・・・で、メンバーはまおがいる時だけ俺が必要以上にベタベタしてくることに気が付き始めた。
「大ちゃんって、ドSだよねえ。まおくんの気持ち知ってるんでしょ?」
「・・・まあな。あの反応かわいすぎるだろ?」
「うっわーっ!悪いオトコだっ!・・・でも、気持ちはわかんなくもない。」
なんて、テニミュメンバー公認の楽しみになっていたりして。
「まーおっ!雨降ってるから傘入れてやろうか?」
「・・・大丈夫。走って帰るから。」
・・・ええっ!?
俺が好きじゃなかったのか?
そこは頬を染めて「ありがとう。」だろうが。
照れが勝ってしまって素直になれないのはよく知っているが、そこまで拒絶されると傷つく。
もしかして、俺が勝手にうぬぼれているだけで、本当にうざいとか思われてたりして・・・。
相方を見失った傘を持ったまま、雨に消えてゆくまおの後ろ姿を呆然と見送る。
「まお・・・。」
振り返ってほしい。
仕事としてじゃなく、「大ちゃんを愛してるよ。」と抱き着いてきてほしい。
俺のことなんて本当に興味がなくなってしまったのだろうか。
あまりに浮気が過ぎるから愛想をつかされたとか?
いや。お前だって、俺の気を引こうとしてわざとタッキーと仲良くしたりしてたじゃないか。
天邪鬼はお互い様だってことか?
気が付けば、自分で仕掛けた罠にすっかりはまってしまっていた。
恋に落ちる。
それは、突然にやってくる。
一目惚れでない相手に、あるひ突然恋をするなんてありえるんだ。と。
初めて知った日でもある。
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注文の~が途中ですが。
こういう始まりってアリだなあ、と思ったので^-^
今の職場でのダンディーな70歳のおじさまがこんな感じなの(笑)
多分、マジ照れしている私の反応を楽しんでいるようなWW
意地悪だなあ、とぷんぷんしながらも、本人前にするとめっちゃ仕事モードな私(笑)
でも、弱いのよねえ・・・。こういうギラギラしてない枯れてるおじさまWW