風呂上りに鏡を前に顔面の筋肉のストレッチをする。
どの角度が一番魅力的に映るのかを研究する。
毎日の俺の日課。
「・・・あ、ニキビ。」
ぽつんと小さなニキビがおでこにできているのを発見して、落ち込む。
食生活が乱れたり、生活リズムが乱れたり、意識してないストレスがたまったり。
お手入れをしているつもりでも、肌は正直だ。
「やっぱ、化粧品変えないといけないかなあ。」
ニキビケアを重視したら潤いが足りなくなりそうだしなあ。
ずらーっと並んだ化粧品のびんを眺める。
「気合、入ってんな。」
悩んでいると、後ろから影が差した。
「あ。大ちゃん。ほら、おでこのとこにきびできちゃった。」
「ん?どこ?・・・言われないとわかんないよ。まおってさあ、そういうとこ乙女みたいだよな。」
じーっと至近距離でおでこを観察され、心臓が暴れだす。
「乙女かなあ?仕事のうちだしね。肌のケアも。」
「やっぱ偉いなあ。まおは。俺は面倒くさいとか思ってしまうけどな。」
すごいな。とつぶやきながら、両手で頬を挟まれる。
じんわりと頬が熱くなってくるのは、大ちゃんの体温のせいばかりではない。
仕事上必要だから。
綺麗に見られたいから。
カッコいい。完ぺきだって言われたいから。
仕事のため、って言うのは嘘ではない。
嘘じゃないけど。
「それに、楽しいしね。」
「へーっ。楽しんでできるなんて、やっぱまおはすごいなあ。」
尊敬するよ。とかなんとか言いながら、頭をくしゃくしゃと撫でてくれるから、心がくすぐったい。
義務でしなきゃいけないこと、なら楽しむことはできないかもしれない。
昨日の自分に勝つため。
愛される自信をもつため。
好きな人に、今が一番輝いている、って思ってもらいたい。
結局のところ、自分のためにしていることだし。
愛ゆえに努力することは、力がふたつも漢字につくぐらい大変なことではない。
むしろ、少しでも大ちゃんに近づけている気がして、嬉しい。
「ほら、そういうとこも。」
「え?何?」
優しいまなざしにドキドキしていると、手に手を重ねられる。
「両手で頬杖つくだろ?」
「あ・・。ほんとだ。癖かも。」
意識したことはないけれど、大ちゃんを眺めていると自然に両手で頬杖をついてしまう。
心臓がドキドキしすぎて、口から出そうなのを押さえていないといけない気がするからだ。
口元を押さえていた手を外しても、もちろん心臓が転がりでることはない。
ないけれど、手がなくなったぶん、大ちゃんを追いかける瞳が熱くなりすぎて溶けそうだ。
キッチンに向かった大ちゃんが後ろ姿になっても、熱は冷めることはない。
「なんか、飲む?」
「あ。お願い。」
しばらくすると、香り高いコーヒーのカップとちょこっとしたお菓子を手に帰ってきた。
「ほら、そういうとも乙女っぽい。」
「え?え?なんか、した?」
自分では女の子っぽい仕草をしているつもりはない。
友達にだって、どっちかというと男っぽいって言われることのほうが多いぐらいだ。
「両手でカップ持ってる。」
「・・・ああ。」
指摘されて、初めて自分が両手でカップを包んでいることに気がつく。
「冷え性だからかなあ。あったかい飲み物だとつい暖をとっちゃうんだよね。
熱いと冷ますのに息を吹きかけやすいってのもあるしね。」
自分では気が付いていない癖。
誰でもひとつやふたつは持ってる気にかけない程度の癖。
「お前は何してても可愛いけどな。」
くしゃくしゃっと頭を撫でた手が、頬をたどる。
嬉しい。
今まで、俺が見つめるばっかりだと思っていた。
一方通行だとか、自分ばっかりが好きだとか。
時折、不安に駆られて努力を欠かすことができなかった。
愛されるための努力。
それは、もちろん、力ばっかりではなくて、楽しいことだったけど。
それでも。
大ちゃんだって、俺を見てくれていた。
自分でも気が付いてなかったような、さりげない癖をみつけて、かわいい、って言ってくれた。
それが、泣きたいほどに嬉しい。
「ありがとうね。・・・大好きだよ。」
頬を撫でていた手に、頬を摺り寄せて、キスをした。
誰にも気が付かれないように、さりげなく。
いつも俺を見守っていてくれる大ちゃん。
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書き直しましたWWW
最初とちょっと変わってる・・かな。
ううう。
45分もかかった・・・。
悲しい。
流れは覚えていてはいても、文章の表現とかは忘れちゃうんだもの。
最初とちょっと違った方向に着地した気もしますが。
久しぶりのお話し、楽しんでいただけたら嬉しいです。
今から、べるばらのDVD見て、月村さんの小説を読む予定だったのに。
どっちか諦めなきゃなあ。