それでさあ。
~~の奥さんって、仕事もしてないし、家事もできないんだって。
でも、子供は3人産んだんだって。

へえ。できることあってよかったじゃん。

それが、子育てもできなかったらしいよ。


親戚の集まりで、おばちゃんの井戸端会議のように繰り広げられる会話。

美点を探してフォローしようとしても、なかなかうまくいかない。

人というものは、どうして他人の不幸話が好きなのだろう。

自分が向上するのに、他人は関係ない。
人を蹴落として上り詰めた地位はあっけなく地に落ちる。
自分を磨かずして得た幸福は、幸せになったと錯覚しただけだ。

それでも束の間の満足感を得ようとして、人はうわさ話をする。


自分だけは違う。と思っていても、多かれ、少なかれ、優越感を得たいという欲望を持っているものだ。

なんだかんだ言いながら、俺もその一人。



「ただいまあ。」
「おかえりっ!楽しかった?久しぶりだもんねえ。」
「ああ。従弟とかめっちゃでっかくなってて、びっくりした。」
「ふふっ。自分だって年いってるんだけど、他人の成長って早く感じるよねえ。」

「だよな。」

25歳のころに、16歳のまおと出会った。
高校生でぽやぽやしていたまおが、こんなに美人でかっこよくなってしっかりものの家内になってくれたというのに。
自分も30過ぎているというのに、年齢を重ねた自覚はない。

「大ちゃん、お腹空いてる?今日は寒かったからあったかいお鍋を用意しておいたよ。
それとも、ゆっくりしたい?日本酒とか?
親戚づきあいでたくさん飲んだ?胃が疲れてるなら、さっぱりしたものでも用意するよ?」

俺の手を引きながら、スリッパの音をパタパタさせてリビングへと向かう。

俺の幸せはここにある。

夢もあって、仕事もできて、家事もできて、俺の好みから体調まで気遣ってくれる。
人と比べてはいけないと思うが。
昼間の話が頭をよぎって、自分が恵まれすぎているなあ。と思わずにはいられない。


「なあに?大ちゃん。」
「ん?なんでもない。」

なんでもない、と言いながらも。


加えて、床上手。


というフレーズが頭をよぎって、完ぺきな恋人を引き寄せるのだった。


「まあ、子供3人は無理だけどな。」
「何?何の話??」

「独り言。」
「えーっ。気になるじゃん。」

「お前が完璧すぎる恋人だって話だよ。」
「そんなことないよお。俺が完璧なら、大ちゃんなんて、スーパー完ぺきじゃない。」

「いやいや、俺なんて。
そんなこと言ったら、お前は神だぞ。」
「えっ。じゃあ、大ちゃんは神様より偉い・・・大魔神??」
「それ、悪者じゃねーかよ。」
「あっ。そっか。じゃあ、天使様?」
「天使はお前だろ。・・・ってゆーか、これ永遠に続かないか?」

それもそうだね。と、笑い合う。


くだらない会話。

どんなに完璧でも、素晴らしいばかりでは息がつまる。
お互いを褒めちぎって、永遠に終わらない会話を繰り返す。

ひとつ不満があるとすれば。

親戚に「俺の恋人はこんなに素晴らしくて、幸せだぞ。」と自慢できないことだろうか。


ひそかに心の中で優越感に浸る。

俺もどこにでもいる人間ってことかな。


あ。ちなみに子供3人は無理でも、一晩に3ラウンドは付き合ってくれる面倒見の良い家内です。


あーっ!言ってみてーっ!!!





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バカ?
バカを目指したつもりが、ちょっと真面目路線にも走ってみたりWW

最初の何にもできないけど、子供3人~~の下りは本日耳にした会話(笑)
「できることがあってよかったね。」は私の大好きなスタッフの返し。
うーん。うまいこと言うなあ。って感心したのでした^-^