「おやすみ。」

先に寝るというまおをベッドに置いて、電気を消そうとするが返事がない。

「・・・おやすみ?」
「んー・・・。あっためていく気ない?」

もぞもぞとみのむしのように布団にくるまったまおが、上目遣いに見つめてくる。

「・・・何を?」
「俺を。」

なんとまあ、かわいい誘い文句。
暖房が入って、部屋はぬくぬくだというのにわかりやすい嘘をつく。

「冷え性だからかなあ。足先が冷たくて、寝付けないんだよね。」

更に言い訳まで重ねるところが、素直じゃなくて、愛おしい。

「しょーがないなあ。」

仕方なく世話をやいてやる。
俺がいなかったら困るんだろ?
オトコゴコロをくすぐるのも、お手のものだから怖い。

計算づくしなら嫌味になるのだろうが、まおの場合は天然だ。

布団にもぐりこんで、望み通り全身をあったかい手のひらで撫でまわしてやる。

「んー・・・。やっぱ、大ちゃんの手、あったかくて気持ちいい。」

うっとりと目を閉じて、ため息をついてみたりする。
むっ。これは無防備作戦かっ!
アナタのことを信用しきってます。好きにしてください。
ってヤツだな?

「お褒めにあずかり光栄です。」
「なにそれ。」

とびっきりの美声を作ってささやいてやると、まおがクスクスと笑う。
おおっ!これぞ、恋人同士の秘密ってヤツではないか。

「んんー・・・。」

無防備に誘いまくっている唇にキスをすると、甘えたような声を出す。

やっぱり、俺の読みはばっちり!
完ぺきすぎて困っちゃうなあ。

そのまま、おとがいのラインを舌先でなぞり、首筋に唇を滑らせてゆく。

「ん・・・。」

うっとりと夢うつつのような表情に、やわらかな声。

くすぐったさに肩をすくめたまおの腕をつかみ、胸の突起まで唇を移動させる。

「あっ。んっ・・・。」

胸を反らし、俺の唇に押し付けるように皮膚を密着させる。

わお。なんだか積極的じゃないかっ!
照れまくって素直に誘えないくせに、カラダは正直なんだな。

するすると背中を撫でていた手を、ふたつの膨らみの狭間に滑り込ませ。
秘めた部分に指先を埋め込もうとして、思いっきり突き飛ばされた。

「ちょっ。何するんだよ。お前。」
「何するの?はこっちだよっ。」

・・・へ?

だって、だってさっきまでノリノリだったじゃないか。

「あっためて、って言っただけなのにっ!」
「・・・だから、あっためてやってるだろ?」

「ちーーーがーーーうーーーっ!」

まおが力説して否定する。

違うんだろうか?
嫌も嫌よも好きうち。

拒否されて素直にひっこめば拗ねまくるという展開が待ってるんじゃないだろうか。
恋のかけひきとやらをするほど器用でないが、まおの場合は天然だから読めない。

「そっか。違うんだな。」
「うん。寝付けないだけだから。」

そーか。そーか。となだめながら、先ほどまでうっとりモードだったキスと手のひらで撫でる行為から始める。

うんうん、そうそう。

と、言わんばかりのまおの反応に、安心しながら・・・。

やっぱり、素肌を撫でていれば、無意識に色んなところに指先も唇も寄り道をしてしまうもので。

「あっ。んっ・・・。だから、違うっ・・・ってっ!」


違う、違う、と呪文のように唱えながらも。
正解なのか、流されただけなのかはわからないけれど。


最後はまおから縋りついてくることになるのだった。


「もうっ。明日早いから、早く寝たかったのにー・・・。」

ぶつくさと文句を言いながら寝間着を整えてゆくまおは、言葉ほどに機嫌は悪そうでない。

「あっためて、やったろ?」
「・・・まあね。」

布団をかけてやり、額にキスをしてやると耳たぶをわずかに染める。


「・・・ありがと。」


扉を閉める音と共に聞こえた声。


やっぱ、素直じゃないところが、最高に可愛い。


せっかくなので、気が付かないふりをしてやった。




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40を超えて更年期なのか、ものすごく冷え性に磨きがかかりました。
磨かんでいーっての!

あっためていって~。は昨日の私のセリフ(笑)
もちろん、そこからの展開は妄想ですがWW