カチャカチャと食器のぶつかる音がする。

ふわりと甘く香ばしい香りが鼻孔をくすぐる。

 

カーテンを全開にした窓からは優しい光が差し込み。

ケトルが吐き出す湯気がしゅんしゅんとメロディーを奏でる。

 

結婚して、よかった。

 

そう思えるのはこういう目覚めの時間。

 

束縛が厳しいわけでもなく、家族仲が悪いわけでもなく。

何不自由ない実家暮らしに不満なんてヒトツもなかったから、家を出るときには少し寂しい気もしたのだけれど。

 

好きな人と同じ空間で目覚め、一日が始まるというのは格別に幸せだ。

 

 

「まお。そろそろ起きろよ。」

「ん・・・。」

 

本当はとっくに目が醒めているんだけど、揺り動かされる手のひらが気持ちよくて寝たふりをする。

 

「・・・まお。せっかくの焼き立てパンが冷めちゃうだろ。コーヒーだってお前のリクエストでわざわざ豆から挽いてやったのに。」

「んんー・・・。」

 

ゆさゆさ。

 

起こしにかかっているはずなのに、大ちゃんの揺さぶり方が優しすぎる。

狸寝入りだったはずが、うとうととまたまどろみに落ちてゆく。

 

「こらっ!まおっ!!寝るなーっ!!」

「・・・はいっ!!」

 

びっくり、した。

 

耳たぶをひっぱり、大声を張り上げた大ちゃんの迫力に一気に目が醒める。

 

「ほんとにお前は毎日毎日・・・。」

「だって、気持ちいいんだもん。布団もふかふかでぬっくぬくだし。」

 

そう、何一つ不満のなかった実家暮らしだったけど、冷え性で寝付けなかった俺は毛布を何重にも重ね、靴下にレッグウオーマーを重ね、結局苦しくなって夜中に目が醒める。という日々を繰り返していた。

 

結婚してよかった。と思うもう一つの理由。

 

大ちゃんの体温は俺よりもずっと高い。

一つのベッドで眠るようになってからというもの、布団に入る瞬間からぽかぽかで夜中にも目覚めることなく、朝も寒さで起きてしまうこともない。

 

おまけに朝食の香りというオマケつきだ。

 

あー、本当に贅沢。甘やかされまくり。

年上旦那最高っ!

 

「ほんとにお前は・・・。」

 

あ。さすがに呆れる?

生活能力がなさすぎるだの。

釣った魚に餌をやりすぎただの。

 

「かわいいよな。」

 

ほけ。

 

寝ぼけた頭で何度もリピートしてみるが、かわいい。と言われた気がする。

 

「ほら。髪の毛はねてんぞ。顔洗ってこい。」

 

俺の頭をぐしゃりと撫でて、タオルを渡される。

白いシャツに短いギャルソンエプロンをした大ちゃんの後ろ姿が最高にかっこよくて。

追いかけて、抱きついていた。

 

「うわっ!なんだ、起きれんじゃん。」

「・・・へへっ。やっぱ大ちゃんかっこいいなあ、と思って。」

 

ぎゅぎゅぎゅーっと抱き着いた腰は、しっかりとした厚みがあって安心できる。

 

「・・・いつまでもくっつき虫してたらメシ食えねーぞ?」

「いい。大ちゃんでお腹いっぱい。」

 

満ち足りた気分でそう告げると、腕の中の大ちゃんがぴくりと反応した。

 

 

「お前、朝からスゲー殺し文句だな。」

「・・・え?」

 

どこにどう殺されたのかわかんないまま、気が付けばリビングの床に転がっていた。

 

 

すっかり体も温まった頃。

 

すっかり冷えてしまった朝食を前に二人で反省するのでした。

 

 

でも、こんな失敗なら毎日してもいいや。

 

 

ふわり、ふわりとエアリーな毎日。

 

 

 

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なーんとなくのイメージでつけた仮題の「エアリー」

本文中に全くエピがでてこないから最後無理やり一文入れたWW

うーん。毎回タイトルに苦しめられるなあ。

 

今日のお話しはアメンバーのケイさんのブログより^-^

いろんな大ちゃんがまおくん(と、勝手に妄想W)とふわふわと甘い朝をお過ごしだったので。

 

よく言われるのですが・・。

うちは、こんなに甘い夫婦じゃないですからね!WW

あくまで妄想です。二人の。

 

子供たちが起こしにくるまでぐーすか寝ているのは共通するかもしれませんW