「それでね。会話がテンポよくって面白くて。

なのに役にはいると急にシリアスになってびっくりするんだよお!」

「楽しそうな現場でよかったな。」

「でしょ?おとーさんがもう一人増えたみたいな感じ。」

 

芸人さんとでは恋敵にならないとは思わないが。

俺の第一印象が「かっこいい人」で惚れたと言われれば、まおの惚れ基準に容姿はそれなりに必要なのだろう、とのんびりと話を聞いてられる。

 

ん?でもおとーさん的な愛情を感じているのは危険かもっ!!

 

「他にはねえ。今回初めての映像なんだけど。

普段は大人しくて大丈夫?って思っちゃうのに、役になるとキラキラしてすっごく強いオーラを放つ子とかねえ。」

「役者って違う自分を演じることができるからな。多分、演じることの魅力に取りつかれるだろうな。ソイツ。」

 

台本をぱらぱらとめくりながら、新作の現場の話をベッドで寝ころびながらする。

たまに「ふにゃ」やら「むぎゅ」やら意味不明な言葉を発しながら俺の腰にまとわりつく。

ひとしきり甘えて満足したかと思えば急に黙り込んで台本に集中していたり。

 

俺がいてもいなくても関係ないんじゃないかってぐらい、マイペースだ。

まあ、最初からこうだったわけではないと思えば、自由気ままに過ごしている扱いにくい猫をイメージさせるまおも、やっとここが我が家だと認識してくれたんだろう。

 

「わ。琢磨君も今このワイン開けてるんだって!

おお!ハマっている本も一緒だあ!

ものすごく好みが合ってびっくりしちゃうんだよね。」

 

じーっと黙っていたから台本に集中していたのかと思えば、いつの間にやらラインをチェックしている。

 

「それでねえ。琢磨君ってすっごく落ち着いているというか、余裕があるっていうか。」

 

・・・ム。むむむ。

まさにまおの理想の男像ではないかっ!

俺のことを「大人だ。器が広い。」とか口では褒めちぎりながら、実は子供っぽいんだよねえ。とか嫌味を言われているような気もするのは被害妄想だろうかっ!

 

「きっと、大ちゃんとも仲良くなれると思うよ?」

「・・・琢磨は確かにいいやつだが・・・。」

 

あまり仲良くしすぎてくれるな。

お前の理想だから器が広い男を演じているが、本当は誰彼構わず笑顔を振り向くたびに気にしてるんだから。

器の広い男としてははっきりと「琢磨はやめとけ。」と言うわけにもいかず、言葉を探してもごもごしていると、急にまおが大声を出す。

 

「あーっ!」

「なんだ?」

 

「もしかして、大ちゃんってば琢磨君に告白されてたりする?」

「・・・はあっ!?」

 

突拍子もない発想はいつものことだが。

まおが琢磨に惚れる・もしくは反対ならまだしも。

ほとんど接点がないのにどこをどーやったらそんな発想になるのやら。

 

「もしかして、それで気をつかってくれてた?」

「・・・いやー・・・。」

 

俺が言葉を選んでいる理由をそんなふうに推測していたのか。

 

「だって、こんなに好みが似てるんだもんっ!

琢磨君も大ちゃんのことが好きになったっておかしくないよね・・・。」

 

友達と好きな人が一緒とかびっくりだよなあ。

琢磨君のことは大好きだけど、大ちゃんはもっと好きだし。

とかなんとか。

 

勝手に話を作り上げて、勝手に悩んでいる。

まあ、聞きたかった一言を自白してくれて結果役得だけど。

 

「・・・おいおい。暴走すんなよな。

そんな発想できるお前のほうがびっくりだよ。」

「・・・え?」

 

「あー・・・。もう言いにくいことを言わせてくれるなよ。」

 

んん?と先を促すように、すりよってきたまおがじっと見つめてくる。

 

「あんま他のヤツのこと褒めちぎるから、嫉妬しただけだよ。」

「何言ってるの?苦手だらけだった俺に、人の良いところを探して仲良くできる技を教えてくれたのは大ちゃんなのに。」

「・・・そうだったな。」

 

警戒心と緊張で真面目すぎたまおの、天真爛漫で明るい愛されキャラを引き出したのは自分だった。

 

「自信もってよ。ね?

って、俺がこんなこと言うのおかしいよね。」

「いや、そんなことない。」

 

お前の一言で頑張れるのだから。

 

まおの頭をぎゅっと抱き寄せると、まおも自分から抱き着いてきた。

 

 

 

「それでさあ。あいつもだいぶ堂々としてきたっつーか。」

「…さっきから大ちゃんそればっかり!そんなにその子がいなら、その子と付き合えばっ!」

「・・・はあっ!?」

 

人の良いところを見て、親近感をもつことを教えてくれた。

と言われたことに気をよくして後輩を褒めちぎっていたら、まおがぷいっと背中を向けてしまう。

 

「なんでお前、そこで拗ねるんだよー・・・。

お前だって、さっきまで共演者のこと褒めちぎっていたじゃねーか。」

 

シーツにくるまった背中が長い間沈黙する。

 

「・・・俺はいいけど、大ちゃんは駄目なのっ!!」

 

やっと返ってきた返事はそんな理不尽なもので。

 

 

「・・・わがままだなあ。お前。」

 

 

それでも、わがままお。を発動させるのは心を許しているからこそ。

と、思えば、愛しさも募るというもの。

 

 

「・・・愛してるよ。まお。」

 

 

拗ねたままの頬にキスをすると、もぞもぞとシーツから顔をのぞかせる。

今度は唇に近い位置にもう一度。

 

 

「・・・やっぱ、嫌。俺だけの大ちゃんでいて。」

「わかってるよ。」

 

 

もう一度。

次のキスは、まおから唇に。

 

 

甘く、あたたかい。

これが、まおの本心。

 

 

 

 

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最初は第三者目線のつもりだったのですが、会話から始めると大ちゃん視点になってしまいましたW

 

元ネタともビミョーにずれてしまったW

元ネタメモ。

 

大ちゃんは尊敬する人
まおが誉めちぎると同意するけど琢磨にはやめとけ。
大ちゃんが誉めちぎるとまおはやきもち。
自分はいいけど大ちゃんは駄目。