「まおはかわいすぎるんだよ。男に押し倒されんなよ。」

「・・・えっ!?ほんとっ!?」

 

メイクしていたまおの背中に話しかけると、ぐりんっ!と一回転してしまいそうな勢いで振り、反動で椅子ごと転げそうになった。

俺の腕に椅子ごと支えられ、デコ全開にして見上げてくる様はやっぱり犯罪的にかわいい。

 

「わわっ!」

「お前、あっぶないなあ。」

「えへへ。ごめん。ごめん。」

 

「ってゆーか、なんでそんなに嬉しそうなんだよ。

身の危険を感じろよ。」

「だって、そういう気分に僕でもなるかも、ってことでしょ?」

「まあ。たいがいの人間はそーなんじゃねー?

まおは自分の魅力をわかってないよ。」

「・・・そーかなあ・・・。」

 

だって、全然そんなそぶりを見せてくれない。

あんなに大人・・・////な、ベッドシーンを演じても、カットがかかったら一瞬で切り替えちゃうじゃないか。

 

「そうだよ。」

 

タッキーがポン。と頭を撫でてみんなのほうに合流する。

「押し倒したくなる」なんて言いながらも、その手のひらは子供に対するものみたいだった。

 

「やっぱなあ。みんなから見たらコドモなんだよなあ。」

 

 

・・・大ちゃんが襲いたくなるような色香が足りないんだろうか。

 

 

その晩、風呂上りにわざとパジャマの前をはだけて、濡れた髪をそのままにしてみた。

 

タクミクンでは、シャツタイプのパジャマのボタンを外すシュチュエーションがエロいって言ってたよな。首筋にキスしやすいからいいとも言ってたっけ。

あと、なんだった?

嬉しがるのはムカツクんだったっけ。

興味なさそうにして、押し倒したくなるような色香を振りまく。

うーん・・。難しいなあ。

 

大ちゃんがシャワーからあがってくるまで、ドキドキしながらベッドの上で待つこと20分。

 

ガチャ。

バスルームのドアが開いて、腰にタオルを巻いただけの大ちゃんがあがってきた。

 

「わっ・・・///」

 

色香たっぷりで誘うつもりが、反対に男の色気にくらくらしてしまう。

 

「なーに意識してんだよ。撮影で散々見慣れてるだろ?」

 

赤面して視線をそらしてしまった僕に気がついたのか、タオルを放りなげて目隠しをしてくれる。

 

・・・って、違うっ!!

僕が照れてどーすんだっ!

 

「それより、お前早く髪の毛乾かせよ。

ボタンも外れてっぞ?」

「・・・・・。」

 

うう。これじゃただのだらしないお子様じゃないか。

情けなくて、投げられたタオルを頭に乗せたままうつむいていると、大ちゃんが心配そうにのぞき込んでくる。

 

「どーした?もしかして気分でも悪いのか?」

「・・・違うよ。・・・大ちゃんを・・・悩殺しようとしたんだよ。」

 

「・・・ノーサツ??」

 

一瞬、いや、かなーり間を置いてから漢字変換できたらしい大ちゃんがぽかーんと目をまんまるにしたかと思うと、次の瞬間笑い転げる。

 

「・・・悩殺ってお前、どこでそんな言葉覚えてきたんだよ。」

「・・・僕じゃ、その気になんない?」

 

必死で見つめるけれど、やっぱり大ちゃんの瞳は優しいお兄さんのままだ。

 

「なってる、なってる。

心配しなくても、ちゃんと恋人同士に見えるさ。

横井監督は神だからな。」

 

・・・違うのに。

撮影のことを心配してるんじゃないのに。

 

 

 

 

「・・・ってことがあったよねえ。」

「懐かしいな。あの頃のお前はかわいかった。悩殺だもんな。」

 

クスクスと笑う大ちゃんの髪が、頬にかかってくすぐったい。

大ちゃんの腕の中で寝がえりをうつと、久しぶりに子供みたいに頭を撫でられた。

 

「ってゆーか、俺的にはあっちのほうが傑作だったぞ?」

「え?どれ?」

 

「ほら。18歳事件。」

「えー・・。そんなのあったっけ?」

 

 

「大ちゃんっ!!18歳になったからいいでしょ?」

「何がだよ。」

 

「本物のXXX」

「・・・おまっ。そーゆーことは面と向かって言うもんじゃねーだろ?」

 

「だって、大ちゃん鈍いからはっきり言わないと伝わんないんだもん。

あ。それとも、わざと気が付かないふりしてんの?」

「いや、それはないだろ。ってか、お前の場合周りが黙ってないんだよ。」

 

なるほど。

 

相談しているつもりはなくても、ついつい愚痴ちゃったり、独り言を言っちゃったり。

俺の周りには世話焼きな先輩方がわんさといるもんね。

せっかく想いが通じ合ったというのに、いつまでも子供扱いで寂しがってるやらなんやらを逐一大ちゃんに報告してたんだろう。

 

「そもそもなんで18歳なんだよ。高校卒業したとか、成人したとかでもなく。」

「・・・え?だって、18歳になったら結婚できるでしょ?それって法律的にもオッケーってことじゃないの?」

 

「・・・お前、する側じゃなくてされる側だろ?」

「そっかあ!ってことは、16歳でオッケーってことじゃん。」

 

「いや。そうじゃなくてさ。するならいいけどされるのはと負担が違うってゆーか。

・・・って、まお、聞いてる?」

 

浮かれまくり、はしゃぎまくり。

タクミクンの撮影で集まっていたメンバーからは「よかったねえ!おめでとう!」

と声をかけてもらい。

 

「ってことで、大ちゃん今夜はよろしくね。

あ。例によって部屋は一緒だから。

明日の撮影ちょっとぐらいは寝坊していいよ~。

まおくんとのシーンにリアルさが出ていいねえ!」

 

にっこにこの微笑みで横井監督に送り出してもらい。

 

・・・いいのか?

こんなに周囲に理解があって。

 

と、戸惑いまくりな大ちゃんの心境なんててーんで気が付かず。

 

鈍いのはどっちだよ。と後々突っ込まれることになったのだった。

 

 

 

 

「・・・あー。あったねえ。そんなこと。」

「そうそう。なんかめっちゃ悪いことしてる気分だったぞ。俺は。」

 

「えー。どうして?公認の仲だったのに。」

「だって、昔っからお前を知ってるから、やっぱ照れくさいってゆーか。

幼さなじみがそのまま恋人になるってこんな感じなんだろーな、とか色々思ったり。」

 

「えーっ。ちょ、それ、酷くない?

てっきり大人の色香むんむんの俺に悩殺されてんのかと思ってたのに。」

「悩殺好きだな。お前。」

 

ぷぷっとまた笑うから。

 

思いっきりぐりんと腰を動かしてやった。

 

 

「うっ!」

「ほら。コドモじゃないでしょ?」

 

「ほんとになあ。いつの間にこんなにテクニシャンにっ・・・っ!」

 

 

ああ。色っぽい。

眉を寄せて息を吐く大ちゃんを眺めながら、大満足な夜を迎えるのでした。

 

 

大ちゃんの愛がほしくてほしくてはらぺこだったあおむしは、

あでやかで色っぽい蝶になりましたとさ。

 

 

 

 

 

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やー、この二人楽しいわ。

一年ほど休んでいる間に昔の作風と随分変わってしまいましたWW

 

切ない・苦しい大まおさんが好きな方にも気に入っていただけると嬉しいです^-^

 

くっつくまでの過程はざくっと飛ばして申し訳ないのですが、

それは過去に散々書いてきたということでお許しくださいWW

 

 

夕方にセットしてるけど、大丈夫な内容だよね?