「もーっ。ちょっと床で寝ちゃったら風邪ひくよお。」

 

大人になっても酒癖というものは成長しないのか、いや、成長しているからこそだらしなくなるのか。

 

床にゴロゴロと転がっている二人にかいがいしく毛布をかけてやるまおは、昔と立場が逆転しているような、そのままのような。

 

「ほんと、しょーがないんだから。」

 

困惑顔をして見せながらも、口元は笑っている。

 

「久しぶりで嬉しかったんだろう。」

「うん。俺も嬉しかった。」

 

素直に俺を見上げてふわりとほほ笑みかける。

10年近く見続けている顔だというのにドキリとした。

 

「・・・まお?」

「・・・うん?」

 

グラスを片手に理解のある恋人を演じていたというのに。

邪魔しないで!からの、この甘えを含む瞳の揺らぎっぷりはどうだ。

同一人物とは思えん・・・って、そこがまおのまおたる所以なんだが。

 

「おいで?」

 

随分鍛えられたというものの、何度も、何度も期待しては振られたハートは硝子のようにもろい。まおのことだ。「まだ片付けが終わってないのに。」とか愚痴をこぼしかねない。

俺が求めてるんじゃなくて、来たいならどうぞ。というポーズを崩さないまま、片肘をついたまま片腕を広げる。

 

くしゃり、と破顔して抱き着いてくる。

どころか。

 

首に腕を回し、すりすりと額を肩口にこすりつけてくるオマケつきだ。

 

オマケに喜ぶ年齢でもなかろう、とは思うが、いくつになっても期待以上のオマケがあると嬉しいものだ。

 

「・・・まお?」

「・・・ん。」

 

言葉は要らないとばかりに、ぎゅうぎゅうとしがみついてくるまおは、まるで子供のようだ。

 

「・・・がんばったな。ご褒美。」

 

認められたい、と独り異国の地で背伸びしていたのだろう。

誰かに頼りたくても頼れない。

常に戦い続けていないと、あっという間に取り残される。

 

年齢の割りにしっかりしていて、ストイックで、芯がある、と評されていたが、

みんなに構われ、愛され、時には甘やかされてもいたことも事実だ。

 

記憶よりもがっしりとした肩幅は、肉体的な成長だけでなく、内面の成長も表しているのだろう。

 

「成長の成果、みんなにお披露目できたもんな。」

 

ご褒美、と撫でていた頭をがばっと起き上がり俺を見つめる。

 

「わかってて、くれたんだ。」

「当たり前だろ?お前の恋人何年やってると思ってるんだ。」

 

綺麗なアーモンド形をした瞳がみるまに潤んでゆく。

 

「ま、お前のことだからあくまで途中経過報告であって、もっと高みを目指してゆくんだろうけど?」

「・・・大ちゃんっ!!」

 

ぶつかるような勢いで、ぶちゅっ!と唇に派手にぶつけられたキスは恋人の甘さとは程遠かったかれど。

 

やっぱり、そんなお前が好きだ。

 

そして、確信したよ。

 

やっぱり、お前にとってのホームはここなんだと。

 

 


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