「メリークリスマスっ!」
「メリーお邪魔虫っ!!」
シャンパン片手にタッキーがやってくる。
「わあ!全然変わんないねえ!タッキー。」
「そういうお前は随分と大人になったなあ。」
「もともと大人だって!もー会うたびにそれなんだから。」
時間が経過しても変わらない光景。
「なになに~?二人で仲睦まじく新婚ごっこしてたのお?」
「気合、入ってるよなあ。」
ばっさばっさと背中に羽織った羽をはためかせながら、苦労の作品のテーブルセッティングの周りを飛び回る馬場りょ。
「・・・って、お前、それハロウインだろーっ!!」
そう。羽は羽でも天使ではなくて、バット。黒い羽だ。
「あれえ?間違えちゃったあ。テヘペロ。」
「30過ぎた男がしてもかわいくないから。」
「いい加減落ち着こうよ。」
俺たちが突っ込みを入れる間も、まおは本物の天使よろしくニコニコとほほ笑んでいる。
「やっぱ馬場っちも変わってないねえ。」
「えっ!?それって成長してないってこと?傷つくなあ。」
自分でネタをふっておきながら、黒い塊となって床に泣き崩れるのもお約束な光景だ。
「ネタはそれぐらいにして。
せっかくまおが帰ってきたんだし、乾杯しようぜ。」
「うんうん。」
「賛成っ!」
シャンパンの栓が抜ける小気味いい音。
カトラリーのぶつかりあうさざめき。
色とりどりの料理にでっかいホールのケーキ。
みんなの笑顔に満足そうにグラスを傾けるまお。
変わらない、わけがない。
タッキーも馬場りょも俺も。
・・・そして、まおも。
学生の延長のようにただ夢だけを見て、楽しくはしゃいでいただけの頃とは違う。
自分の未熟さも、弱点も、現実も知った。
だからこそ、成長も、努力も、夢は実現することも知った。
世間を知らず、甘く青臭い青春。
実力はなくとも、エネルギーだけは有り余るほどあった。
あの頃に戻りたいとは露程にも思わないが、この絆は財産だと思う。
タッキーがいて、馬場りょがいて。
・・・そして、まおがいる。
それぞれ大人になったり、おじさんになったり(笑)
変化しているはずなのに、まおを囲むとあの頃の空気に戻る。
「やっぱ、すげーよ。お前。」