「へえ、そうなんだ。」

何気ないふりで話を聞いているけれど、先程から机の上は禁煙したはずの煙草が山盛りになっている。
挑発しているのか、天然なのか。

誰にでも優しくマメだという噂の男は、たまたま、ほんとにたまたま、気があって遊びに行ったのだと世間話をしているだけかもしれない。

「ほんと、いい子で趣味も合うし、うれしくなっちゃうぐらいなんだよね。」
「ああ。アイツはそういうヤツだよな。」

お前よりもよっぽどまおのことを知り尽くしているし、付き合いだって長いんだ。
表面的な趣味は似てないかもしれないけど、根っこのところが似てる。と言われたことだってあるんだぞ。

露骨に張り合うのはプライドが許さないから言葉にはしないけど、知ったかぶりをするんじゃねーよ。と軽く牽制をかける。

「・・・あ、そういえば大ちゃんとも仲がいいんだっけ?」
「そりゃ、デビューからの付き合いだからな。」

・・・も、とはなんだ?も、とは。
まるで自分のほうがまおの中で上位だと言わんばかりだ。

「琢磨は偉いよな。誰とでもすぐにうちとけられて。」

そう、誰とでも。
まお、に限定したことじゃない。

ただ、誰とでも。ではないまおが琢磨には心を許しているような気がするのは気にくわない。

幼かったまおは、言葉にしなくても視線がいつもすがりついてきて「好きだ。」と訴えかけていた。告白なんてなくても、その瞳を見詰めれば信じることができた。
・・・だって、そうだろ?あの一点の曇りもない透明は瞳にみつめられて平然としていられるヤツなんているのだろうか?

自分がいつからまおのことを好きだったか、なんてわからない。
アダムとイブが洋服を身にまとうようになって初めて裸でいることが恥ずかしいと感じるようになったように、いつのまにかあの視線がないと落ちつかなくなっていた。
まおの視線の先にいることが当たり前で、自分の居場所であるような気がしていたから。


・・・そのうち、飽きるだろう。

強がってみるけど、一向に心のざわざわは落ちつかない。
一度「好き。」と思ったものに対しての情熱を知っているから。

一向に冷めない情熱をかけ続けてくれたまお。
こういう愛のカタチもあるものだ。と教えてくれたけれど。

始まりがあれば終りがあるのが自然の条理。
恋も例外ではない。

まおと出会う前に当たり前だと感じていた価値観が、むくむくと顔を出し自信を揺さぶる。
上の空で聞いていた琢磨の声が急にクリアになり、心にとびこんでくる。


「・・・でもほんと、まおって大ちゃんのことが大好きなんだねー・・・。」


「・・・え?」


「だから、全然違う話をしててもすぐに大ちゃんに結びつくんだよね。まおって。
そんなに思われて男冥利につきるんじゃない?・・・羨ましいぐらいだよ。」


「・・・そうか。そんなこと言ってるのか。アイツ。」


前言撤回。


さすがまおが惚れるだけある。いい男じゃねーか。琢磨。



たんじゅん、ばか。


そんな声が聞こえてきそうだけど、男はそれぐらいがいい。


疑って、ひねくれて、みすみす幸せを逃してしまうぐらいなら、単純馬鹿になってとことん相手を信じてやろう。



好きだよ。まお。






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久しぶりにお話です。
高原ホテル~は時間がかかるのでW 軽めのものを。

好きな人がかぶったちゃった、ってゆーネットのネタから久しぶりにわだっクマとの三角関係らしきものを描いてみました^^