「・・・ったく、こんなに影響受けやすいタイプだったっけなあ?」

また一瓶。

並んでしまった瓶をながめながら、一人ごちる。

ひとり暮らしには相応しくない、コレクションのように並んだ瓶の原因はアイツだ。



「あ。これ、飲みやすいかも。」


別に飲めなくても、構わないと思うのだけど、
コーヒーを飲めるようようになるのが目標だと言う彼。

「だって、大人になった気がするでしょ!?」

そんなことで大人の尺度を計ろうとするところこそが、
まだまだ幼いんだ、と気がつきもしない。

差し入れであったから飲んでいるインスタントのコーヒーを、
必死でちびちびと舐めている。

「それは酸味が強いから、こっちのほうがお前向きだよ。」

そんなことにこだわらなくても、と思いながら、真剣そのもの!で
格闘している彼の横顔を見ていると、世話をやきたくなる。

「えっ!コーヒーに種類なんてあるの?
ミルクを入れるかどうか以外に?」

大ちゃんってやっぱり大人だねえ。
などと、きらきらした瞳を向けられれば、悪い気はしない。


「今度、美味しいコーヒーを淹れてやるよ。」
「・・・えっ。ほんと?」

そんな誘い文句をかけてしまったのは、ほんの気紛れ。

座長である任を超えたことであることに気がつかず、
苦手なダンスを克服するのを助けるのが当たり前のように声をかけた。


以来、稽古が終るとちょこちょこ俺の家に寄るようになった彼。


もともと懲り出したらとことん!の性格ではあるけれど、
こんなに瓶の種類が増えてしまったのはアイツの笑顔が見たいからだと今では自覚している。


「今日は、これにすっかな。」


豆を挽く香りが部屋中にふわっと漂う。


香りが運んできてくれるのは、アイツとの楽しい時間。



「大ちゃ~~ん。きたよ~~。」

「おっ!まお。今日は遅かったじゃないか。」


ピンポーンとインターホンが鳴る。

いそいそと向かう足が、軽やかなのは気のせい、じゃない。


いつになくわくわくとしている自分を感じながら、ドアを開けるのだった。



清く正しく純粋に。


たまには、こんな恋も悪くはない。




----------------------------------------


ふと浮かんだタイトル。

タイトルが気に入ってお話を~と思ったのだけど、
ちょっとライトになりすぎました(笑)