誰も輝きに気がつかなかった川底の石っころ。

価値がわかる人間だけが拾い上げ、ピカピカに磨き上げ、小さな硝子の箱に入れる。

誰にも見向きもされなかった石っころが、目が飛び出るような価格をつけられ、うやうやしく飾られる。


自分だけのものだと握り締めていた石っころが、みんなの前でお披露目されることに誇らしさと嫉妬を感じる。

誰より、彼の輝きに気がついていたのは自分だった。と、大声で叫びたくなる。


「ここまでこれたのは、大ちゃんのお陰だよ?」

そんなふうに、ふわり。と微笑んでみせるけど。
石っころだったときのような自信のなさからくる頼りなさは微塵も感じられない。

努力の人。

俺のことをそう呼んで、背中を追いかけてくれていたことは知っているけど。

やっぱり、お前は自分の足で、自分の意思で、常に未来を見据えていた。

ひたむきな向上心と、好奇心と、強い情熱で。


・・・まあ、コイゴコロ。というやつも、そのアツさで燃え上がったわけだけれど。


「焼け尽きるなよ。」


時折、心配になるようなひたむきさ。
求められることが不安になるような真っ直ぐな瞳。


・・・俺は怖かったのかもしれない。


「一人暮らしなの?すごい!!大人!!」


ごくごく普通の青年男子がしているようなことを、特別に素晴らしいと尊敬してくれるような純な心が、いつ平凡なただの男であると気がついて愛想をつかしてしまわないか、と。

「別に、すごくないよ。生活だっていい加減になるし。
・・・あー・・・。米炊いたのいつだったかなあ?」
「えっ!?料理できるのっ!?
すっごい!一人なのに、ちゃんとしてるんだねえ!」

「・・・だから、自炊がなかなかできないから、こうやって野菜ジュースを飲んでるんじゃ・・・。」
「あっ!そっかあ。ちゃんと栄養バランスの考えてるんだね!やっぱ、大ちゃんってすごい!」

・・・まお、聞いてる??
と、突っ込みたくなるようなキラキラお目目で俺をどんどん美化していっているような気がして、
焦りを感じていた。

まおの目に映る「渡辺大輔」

その憧れを壊したくなくて、楽なほうに逃げてしまわずに、努力し続けていられた部分もあると思う。
・・・そういう意味では、ベストパートナーだと言えるのだろう。


本当は。


ちっちゃな箱に入ったキラメキに憧れを抱いていたのは、俺のほうだった。


「家族と同居。って、面倒くさいとか思ってない?」


「度重なる外泊は家族にいい印象を与えないだろう?」
と、断腸の思いでまおの背中を押し出した。

ゆら。と不安気に揺れる瞳に「そんなことないよ。」と笑いながらも、面倒臭いどころか、
誰からも愛される存在であることにより一層愛しさを募らせた。


箱入り息子。


大切に、大切に育てたれた宝石は、気安く手を触れることをためらわせるほどの存在だった。



・・・まお。


その小さな箱から出て。


俺がどこにでもいる人間だと気がついても。


それでも、愛してる。と言ってくれるだろうか?




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とっても、とっても久しぶりのお話めいたものを描いてみましたが・・・WW
詩のようになってしまいましたW
しかも、ネガティブ(笑)

ふと、自由で何でもできて、誰からも尊敬されるような人間が。
「ちっちゃな箱に憧れていた。」という感情がわきあがってきたのですW

外に、上に!!って目を向けがちですが、もしかしたら、もっとちっぽけなことがキラキラと輝いているものかもしれません^^