大好きな星空を二人締めしている満足感に浸る。
唯一触れている指先に、安心感と、物足りなさを感じる。

肉体の欲望が満たされても、いつも中心にある空虚は埋められなかった。
宝物を扱うように、そっと大切に触れてくる彼の態度は、心地よくも不安になる。
確かに、ぼくに好意を持ってくれている、ということは感じるけれど。
信頼できるような、薄いベールがかかってるように手が届きそうで届かないような。

もっと、触れてほしい。

そう願ってしまうことが、浅ましく感じる。
それでは、今までぼくの上にのしかかってきた男達と変わらないのではないか。と。

・・・結局、今まで人を本気で好きになったことなんてなかったんだ。

惚れっぽい、と思っていたのはきっと思い込みで。
表面的は容姿や優しさを、まるでスクリーンに映しだすように美化した虚像を、
何度も再生して自己満足していた。
生々しい体温に触れると、満たされる欲望とは裏腹に、嫌悪を感じた。

本気の恋をすると、こんなにも触れたくて、でも触れられなくて、臆病になる。

全裸になっても、どんなに大胆に求め合っても、決して触れ合うことのなかった心が。
身体の端っこについたたった5本の細い指先から、存在全てが流れ込んでくるよう感じる。

強く抱き締めて、抱きしめられたい。

だけど、ぼくにできたのは、指先に力を込めて握りしめることと。

「キス、してもいいですか?」

と、ぎこちなく唇を合せることだけだった。

それでも。
愛おしそうに包み込んでくれる彼の視線に、胸が張り裂けそうなぐらいの幸福感を感じるのだった。