慣れた手つきで簡易テントと寝袋をセットしてゆくアルタイルの手つきを、ぼんやりと眺めていた。

「・・・ああ。ごめん、ごめん。勝手にしちゃって。
独りに慣れてるから、つい。」
「・・・いつも、独りで観測しにくるんですか?」

何をすればいいかわからない。とぼんやりしていたわけではなくて。
出会ってから、数ヶ月が経とうとしているのに、恋をしているのは確実なのに。
キスをするどころか、想いを打ちけることさえしていなかったことに気がついて、呆然としていた。
いつも、身体の関係から始まっていたから。
どんなふうに、どんなタイミングで打ち明けたらいいのかがわからない。

・・・・あのバーにくるってことは、可能性あり、って思っていいんだよな?

友人のように楽しい時を過ごして、自然に恋に落ちて。
そんなシュチュエーションを夢みていたはずなのに。
いざ。本当にいつまでも友人のように楽しくて居心地のよい時間ばかりだと、不安になる。

・・・人間って、わがまま。

「んー・・・。なかなか、こんな趣味につきあってくれる友人もいないしね。」
「そう、ですよね。ぼくも友人を誘ったら、断られてしまいました。」

人当たりがよさそうで。
「実力世界だよ。」と軽やかに笑う彼。
決して強引に触れてこようとしない紳士で、優しい彼。

なのに、独りに慣れてるから。と、やわらかに笑う。
もしかして。
ぼくと同じように、誰にも深入りぜずに心の奥ではひっそりと生きてきたのかもしれない。

「手伝ってもいい?」
「もちろん。」

愛に恵まれて、自分の生き方に自信があって。
それゆえに、余裕があってぼくを包み込んでくれる。

そんなふうに感じていたけれど。
もしかしたら、同じ弱い部分をもっているから惹かれるのかもしれない。




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自分で作った設定を忘れてしまっていて、久しぶりに読み返すと矛盾だらけで
「あちゃー。」と思いながら、展開が変わりまくっているこのお話(笑)

自分の中ではすっかりお付き合いが始まっているつもりだったんだけど、
よく考えたら、この二人キスはおろか、告白さえもしてないわあWと、12ページ目にして気がついたのです(笑)