ずっしりと重い書類の束を抱えて出勤する足取りは、寝不足のだるさとは裏腹にやけにすっきりとして心地よい。
自慢だけど。要領のよさだけで人生わたってきた自負のある俺にとっては、地道に努力して物事をこなす、なんてダセーと思っていた。

「ちょっと気持ちいいかも。」

要点だけをピックアップした友人の素晴らしくまとめあげられたノートを丸暗記だとか。人脈をふる活用して講義の出欠を確保してバイトと合コ三昧だとか。楽して、いかに効率よく人生を渡り歩くか。をモットーに生きてきたし、こなせている自分というものに付加価値というか、自己陶酔していた部分もあった。

膨大な情報量から、自分で地道に整理していって引き出しに理論整然と片付ける、という作業を終えると、性格までもがなんだかキチン。とした気がしていつもより丁寧にネクタイを締めてみたりして。

まぶたは重いのに、頭の中は妙にすっきり、という変な気分を抱えたまま、教室のドアを開ける。

「おっはよーございまー・・・。」

子供たちのパワーに負けないように、テンションを目一杯上げて教室の扉を開けると、教室の真ん中でたくさんの子供たちに囲まれて和気合い合いとしている貴水先生の姿があった。

「・・・おはよう。遅かったじゃないか。」

俺の顔を見て笑った先生は、心なしか昨日みたいに意地悪な目をしていたなかった気がする。
子供の手前、取り繕っているだけかもしれないけど。

「や、昨日遅くて起きれなくて・・。」

テキトーがモットーの俺と言えども、先輩よりも遅い出勤というのはさすがにバツが悪くて、ごにょごにょと言葉を濁す。

「まあ、遅刻、というわけじゃないからいいけどな。
授業に入ってしまえば、なかなか一人一人と話できないだろ?
この朝の数十分って、貴重だと思わないか?」
「あ・・・。」

新人のくせにやる気あるのか!とか。
きっと嫌味たらたら怒られる!と身構えていた俺は、淡々と語られる言葉に拍子抜けした。

「ちなみに。」

体温を感じるぐらい先生が距離をつめてきて、圧迫感に息が苦しくなりそうになると、ふわり、と温かいものが瞼に触れた。

「寝不足は、きちんと隠してくるように。」

血流が滞って重だるい瞼を、ぐりぐりと強弱をつけてマッサージされて、心地よさに「もっと。」とねだりたくなる。

「せーんせ、ちゅーしてほしいの?」

無邪気な子供の声にはっと我に帰った。
滞った血流がじわじわと流れ出す感覚が心地良いだけだったのだけれど、もしかして物欲しそうな顔をしていたのだろうか。

「・・・えっ!?やっ。ちがっ!」
「・・・そうだねえ。志方先生は甘えただからな。」

子供の素直な?感想にオタオタしている俺を無視して、悠々と相手をしている。

「誰が甘えたですかっ!!」
「・・・違うの?初日そうそう無理です。って泣きついていたくせに。」
「泣いてませんっ!!」

俺達のやりとりをケタケタと面白がっている生徒たち。

「せーんせ、泣いてたの?よしよししたげる~。」

精一杯背伸びして、頭をなでてくれる小さな手。
この子は、確か4人兄弟の長男で、両親が共働きで。
でも、おばあちゃんがいてくれるから、家庭環境に心配はなくて、素直で真っ直ぐすぎるところが融通がきかなくて心配。って言っていた・・・。

じっと自分を見詰めているたくさんの目が、ひとつひとつ個性をもったものとして感じられる。
なんというか。生徒VS教師!!のようなやってやるぞ!というやる気ではなく、大勢の中の中心にいるような居心地のよさ。

・・・ああ。貴水先生の伝えたかったことは、このことなのかな?

心が真綿に包まれたようにふんわりとして。
少しだけ、素直に受け取ってみようか、という気になった。


----------------------------------------------------

久しぶりのお話^^
基本的に、真面目な??文章の多い私ですが、かるーい感じのこのお話はなんだかとっても楽です^^

ひさしぶりにネタ帳を開いたら、「ふえると、よろこびとあせり。」
「せのびしてない。若返っている。」
「うきうき。そわそわ。いつもどおりにDVDを見て、ビールを開けて」

・・・と、メモってあるんだけど、何のことだかさっぱりわからんWW
多分、大まおじゃなくて、この二人でばーっと浮かんだ情景をメモしてるんだろうけど。

そもそも、どちらの感情を表したものなのか?はて??

本日はお休みをいただいているので、これからエステに行ってきます^^
一ヶ月前の日焼けのあとが、かゆくてざらざらする~~WW