いきなり②から始まりますがWW
随分と以前にオリジナルです!と唐突に始まった「いち。」という仮タイトルの続きです。
どうもいいタイトルが思いつかなくて~~。

久しぶりのお話がオリジナルでごめんなさい。
別館のほうで一ページしかかいていないのに、たくさんの方が読んでくださっていたので、続きを描かないと!!という使命感にかられまして・・・WW


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「貴水先生は先に行って待っててくれるから。」

いよいよ嬉し恥ずかし、ドッキドキの担任デビューの朝、にっこりと日誌を渡してくれる校長が、悪たぬきにしか見えなかったのに、仏様に見える。

「はいっ!頑張ってきます!」

ここは、一発いいところを見せなくっちゃ!
第一印象というものが大切だからな。
「頼りになる先生」とイメージを植え付けて、「すごく信用できるわ。」なーんて、そのまま俺自身も信用してもらって、あわよくばベットに・・・。

ああ。駄目だ。駄目だ。
今からぴっかぴかの一年生を相手にするのに、こんなににやけた表情をしていては!!
あ~。でも、春っていいよなあ。
新しい環境、新しい出会い、新しい恋・・。

はやる気持ちを抑えながらも、ガラッとドアを開ける勢いが必要以上に元気になってしまうのは仕方がない。

「みなさんっ!おっはよ~ごさいまー・・・。」

あり??ありり??
確かに、貴水先生は先に行っている、と言っていたはず。
美人で有名なおねーさまの姿が見当たらないんですけど。

「・・・誰?あの人。」

ぐるり。と巡らせた視線が、教室の後ろで腕を組んでいる人物でピタリ。と止まる。
怜悧な美貌を黒縁の眼鏡で隠しているような男性だった。
綺麗だけど、こちらを試すような斜に構えた視線に射とめられて身動きがとれなくなる。

「じゃあ、机の中に入っているものを全部出してくださ~い。」

確認するふりをしながら、はーいっ!と素直に返事するぴっかぴかの笑顔と対照的な彼に近づく。

「あの~。もしかして、貴水先生の代理の方ですか?」

この人は何か急用があって、頼まれただけなかもしれない。
新人のお世話だなんて、面倒臭いことを急遽押し付けられて機嫌が悪いだけなんだ。

顔色を伺いながら尋ねると、貴水先生が片眉だけをひそめてボソっとつぶやいた。

「・・・貴水は俺だけど。」
「・・・は?」

先輩だというのに、意外な展開に間抜けな声で失礼な反応をしてしまう。

「あの~。今、なんとおっしゃいましたか?」
「だから、俺がお前のフォローをする副担任だっつーの。」

「ええっ!?だって、ゆうりちゃんって・・・。」

情けなくも諦めいれない俺が食い下がると、馬鹿か。というような冷たい視線が痛い。

「誰がゆうりちゃんだ。タカミトモリ。大方、邪な想像でもしていたんだろ。お前、自分が教師として一人前になるのが第一目標だっていうことを忘れるなよ。」
「う・・・。」

初対面なのに、何から何までお見通しだなんて。
同じ大学出身だから楽しみ、って言っていたのは誰ですかっ!?
美人だって噂だって言ったのは誰ですかっ!?

・・・や。確かに先輩なんだろうし、美人ではあるけれど。
ひとつも嘘はないけどっ!!
もんのすごくだまされた気分だっ!!

腕組みしたままゆらぎもしない眼鏡越しの瞳をじーっと睨んでいると、あちこちから声があがる。

「せんせーっ!このカードあなに?」
「せんせーっ!となりのこが、ぬすんできたあ!」

「わっ!えっと、出したものはそのままで、まださわらないでくださ~いっ!!」

オタオタと教卓に駆け戻って声をかけるけれど、一旦ざわついてしまった教室は元には戻らない。
みんな自分の好き勝手に整理して置いてあった教科書やプリントをいじくりまわしている。

「あ。それはね。くまさんと友達だから、こっちに入れておいてね。」

今まで腕を組んでみているだけだった貴水先生が、俺に見せた顔と同一人物とは思えないぐらいの優しい笑みと丁寧な口調で生徒ひとりひとりに声をかけている。

女の子に至っては、貴水先生と目があっただけでぽっと頬を染めて別人のようにおとなしくなる。

わかりやすくて、かわいいな~~。
と、思うと同時に容姿を使うなんて反則だっ!!俺がいくら頑張ってもみんな人の言うことを聞いてないのに~~。と、嫉妬心がメラメラと沸いてくる。

・・・ん?でも、男子もこっちじゃなくて、貴水先生のほうを見ている気がするのは、どうしてだ??

俺が話しすることを、貴水先生が通訳するように子供たちに説明すると、「はーいっ!」と素直な返事が返ってくる。

こんなに全力投球で頑張っているのに・・・。
これが世に言うから周り。ってやつなのだろうか?


「・・・疲れた・・・。」