美貌のスチール撮影の日がやってくる。

自分の気持ちをはっきりと自覚してしまってから顔を合せるのは、照れくさかった。
最後に会ったときの悲しそうな瞳はすっかり消えて、穏やかにスタッフさんと話をしているまおを見つけ、ほっとする。

よっ!とさりげないふりをして声を掛けると、「あっ。大ちゃん。」と、笑う。
秋だというのに、一気に周囲が明るくなったようだった。

「なんか、恥ずかしいな。」
まおの隣に立って、まおだけに聞こえるように耳打ちする。

「・・・え?大ちゃんが?今更??」

きょとん、と俺を見上げてくるまおが憎らしい。
俺は、こんなにいっぱいいっぱいだというのに、どうしてコイツはこうも余裕なのだろう?

「今更。だからだよ。・・・この年になると、色々勇気がいるんだよ。」
「ふーん。そういうものなの?」

本当に、見返りなんてちっとも求めていなくて、ただ好き。という感情を伝えただけだったのだろうか?
俺があんなに悩んで、苦しんで乗り越えた壁を、あっさりクリアしやがって。

「・・お前、なんでそんなに普通なんだよ?」
「・・・え?だって、2作目で少しは現場に慣れたってゆーか、安心するってゆーか・・・。
それに、大ちゃんがいるしね。」

・・・がっくし。
誰が撮影の話をしてるんだよっ!

あんなことがあった後だったら、普通は返事を待ってると思うだろ??
ちゃんと、考えさせて。って言ったよな?俺。
・・・天然にも、ほどがある。

「・・・ちげーよっ!」

あまりにも、まおが純で、自分ばっかりが意識していることが恥ずかしくて、「わかれよっ!」という意思表示を込めて、まおの手をぎゅ、と、摑んだ。

「この前の返事、まだだったろ?」
「・・・あ。」

空気を計る温度計、というものがあるのならば、きっと俺の周りだけは高くなっているだろう。
人生初、というぐらい、顔に血が上ってドキドキする。
こんなに緊張する告白なんて、初めてだ。

「・・・俺も、お前と同じ意味で好き、だから。」
「・・・うそ。」

前を向いたまま、決死の覚悟で告げると、まおが俺を見上げるのがわかる。
じーっと横顔を見詰められて、じんわり。と空気がほどけてゆくのがわかる。