お互いに今までの関係が壊れなかった安心感みたいなものに、安堵した沈黙が流れる。

今まで普通に遊んでいたダチに、、改めて「これからも宜しくな。」なんて言うのもおかしいような気がして。
だからと言って、「じゃあ、またな。」と会話を終らせてしまうのも、薄情な気がして。

二人の間に存在する感情は何一つ変わらないかもしれないけれど、言葉にしたことで流れる空気が微妙に変化したことに戸惑っていると、ゆんが先に沈黙を破った。

<・・・ねえ。ひとつだけ聞いていい?>
<・・・なんだ?>

真剣な、でもどこかやわらかい声色だった。

今回の告白は想定外でびっくりはしたけれど。
何より、ゆんが独りで抱え込んで悩んでいたことが苦しかった。
何でも話せる親友だと思っていただけに。

今度は、何を聞かれるのだろうか。と身構たけれど、秘密にされて一人で悩まれるほうが辛い。
俺が答えを出せる質問ならば、何でも答えようと思った。

<・・・まお君のこと、好き?>

投げかけられた問い、は、これまた思いがけないところから投げられた変化球だった。

・・・何ゆえに、いきなりここでまおの名前??

昨日からいろんなことがありすぎて、対処しきれない。

・・・でも、よくよく考えれば、「一線超えたの?」と真剣に問うてきたゆんはどこかおかしかった。
メンバー全員が日常茶飯事に使っているネタを、改めて確認してくるなんて。
今思えば、ゆんの行動や反応がすべて理解できる。

・・・まお。

まおは、どうなんだろう??

メンバーの一人で、友情で・・・??

まおのことを考えると、心のどこかがざわざわと落ちつかなくなる。
無理やりに搾り取られる果実のように、胸がきゅんと痛くなる。
ゆんの気持ちを知ったときに感じた罪悪感のような痛みとは、種類が違う痛み。

土台が崩れてしまった寂しさが生じさせる胸の痛み。
本当に、それだけ・・・か?

自分から主張するタイプじゃなくて、ほおっておけない。と気にかけていた。
ダンスがついていけない。と悩んでいたから、練習に付き合った。
偶然映画で共演することがあったから、急速に距離が縮まった。

気になる存在であることは、間違いないけれど。
ゆんのように自然と話題が合って、意気投合したわけではなく。
いくつもの条件が重なったから、まおのことを思ってしまうのではないか。
という気もする。

ゆんの告白を聞いた直後だけに、同性だからありえない。という先入観は抜きにしても。
相手は9歳も年下の現役高校生だ。
恋の対象になりえるわけがない。

好きか?と聞かれれば、間髪入れず「好きだけど?」と答えるだろう。

けれど、ゆんの「好き?」という質問は単に好き嫌いの好みを聞いているわけではないことぐらいわかっている。
4代目の誰に聞いても、「まおくん?大好きだよ?」と答えるだろう。

ゆんと、まお。

どちらも自分にとってはたいせつで、必要で、愛するべき存在で・・・。

自分をゆだねる存在と、守るべき存在だから??
年齢が、違いすぎるから??

色んな理由を並べてみるけれど、やっぱり何か種類の違う感情のような気がする。

まおのことを考えると、ぐらぐらと不安定になってしまうのは。
危うい切なさのような感情が生まれてしまうのは。

友情の根底にあるものが、すでに揺るがない愛情だとするならば。
穏やかに、永遠に続く冷めることなき愛情だ。と言い切るには、自信がなくなってしまうのは、なぜだろう?
離れてしまえば、終ってしまうのか?と不安にかられるのは何故だろう?

あんなにも、「大ちゃんのこと、尊敬してるよ。」と、好意を示してくれているというのに。


<・・・さあ。どうだろうな・・・>

ゆんが真っ直ぐにぶつけてきてくれた気持ちを裏切りたくなかった。

ゆんを傷つけないように、とか、嘘くさくならないように。だとか配慮したわけではなく。
素直な自分の気持ちを伝えたかったけれど、明確なこの感情に対する「名前」がわからなかった。



-----------------------------------------------

あ~、楽しい!
この告白のゆらぎみたいものって、描いていてどうしてこんなに楽しいんでしょうね^^

するほうも、されるほうも^^

ゆんが告白したことで、名前なんて関係ないといいながらも、感情の名前にこだわちゃっている大ちゃんでしたWW

だって、まおくんのことが好きなんて、当たり前だもん(笑)
多分、ゆんだって好きだよ(笑)